※こちらの記事は、『認知症の私と家族【前編】 ―診断に至るまで―』の続きです。
心療内科にて”脳の検査を受けたほうがよい”と助言された藤田さん。その後、脳神経内科にて診察を受けました。
診断を受けたからといって、自分であることに変わりはない
さまざまな検査の結果、藤田さんは初期のアルツハイマー病と診断されました。しかし、今までの生活のしづらさの原因が、”自身の努力が足りないからではない”ことが分かり、ある意味ほっとしたと、藤田さんは振り返ります。一方で、認知症であった母親の介護経験があった藤田さんの夫は動揺されていたそうです。
「診断結果にショックを受けている夫を見て、その時は、『診断を受けたのは私の方だというのに……』という想いも正直ありましたが(笑)。ただ当然夫としても、これからの生活や私との関わり方に不安を抱いたのだと思います。」
不安そうな夫を見た藤田さんは、”私がしっかりしなきゃ”という想いの元、家族や周囲の人たちの力も借りながら、”これからどう暮らすか”、自分なりの生き方を考えることができたそうです。
「診断を受けても、私が私じゃなくなるわけではありません。診断を受けたことにより、違和感と付き合いながらも、私らしく家族や大切な人たちと生活していきたいと思えるようになりました。」
診断後に実感した、”変わらぬ関係”の重要性
診断後のご家族との関係や生活について伺ったところ、「大きくは変わらなかった」と藤田さんは言います。
「日々の生活のしづらさはありますが、家族から見れば今までと変わらない『お母さん』のままです。私の症状に気をかけてくれつつも、娘は変わらず私を頼ってくれましたし、夫も基本的に家庭のことは私に任せていました。」
診断後間もない頃は、夫と言い合ったり、思うようにできない自分に苛立ち、家族へ当たってしまったり……ということもあったようです。しかし、家族の関係性が変わることはありませんでした。
「変わらぬ家族が身近にいたからこそ、互いに支え合い、『母である私』として生活し続けることができたと思います。」
認知症になっても「わたし」であることに変わりはない。大切なのは、認知症の症状に目を向けるのではなく、家庭で役割を持つひとりの人として生きること。そして”互いを尊重する”こと。これは、藤田さんの実体験から受け取れる、認知症と向き合うためのヒントかもしれません。
認知症があっても、一人の自分として前向きになることはできる
さいごに藤田さんへ、認知症の人本人として、発信したいメッセージを伺いました。
「何気なくしているようでも、とても気を張って生活する日々。ほんの少しの手助けや声かけでもうれしい。そして何よりも大切なのは、認知症になったからというだけで、何もできなくなると諦めてしまわないことです。本人が諦めずに頑張れるよう、共にいてくれる人、同じように認知症とともに自分らしく生きる仲間との出会いがあれば、それからの毎日を前向きに生活していくことができるのだと思います。」
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