『認知症こどもサイト』を子どもの理解の架け橋に 【後編】

『認知症こどもサイト』を子どもの理解の架け橋に 【後編】

公益社団法人「認知症の人と家族の会(以下、家族の会)」の芦野さん。前編では、家族の会の成り立ちと取り組みについてお話を伺いました。後編では、未来を担う子ども世代への取り組み「認知症こどもサイト(※1)」について、お話を伺います。

「認知症こどもサイト」で正しい理解を

2022年3月、家族の会は小学生を対象とした「認知症こどもサイト」を開設しました。
「子どもたちが正しい知識を持ち、認知症について考えるきっかけを作ることを目的に作成しました。認知症の情報を発信するメディアが多くある中で、『認知症こどもサイト』は、子どもたちが関心を持ち、楽しみながら学ぶことができます。自分の身の回りで認知症の方に出会った時に活かし、認知症に関する話題を見聞きした時に考えてもらえるものにしたい、というのがわたしたちの想いです。」
クイズ形式を軸に、ストーリーと共に認知症を学べる「認知症こどもサイト」。子どもが”自分ゴト”として認知症を身近に感じられるよう、多くの工夫が施されています。
▲『認知症こどもサイト』公式ホームページ

▲『認知症こどもサイト』公式ホームページ

あらゆる視点を活かしたコンテンツ作り

認知症の知識、子どもと祖母の対話や接触から生まれる身近なストーリー、そして親しみやすいデザイン……「認知症こどもサイト」は、家族の会らしく様々な立場の人たちが力を合わせて作り上げたそうです。
「医師・教師・介護者・当事者等10人のチームで、デザイン会社様やWEB制作会社様にご協力を得ながら、試行錯誤を重ねてコンテンツを練りました。あらゆる角度から、正しい情報はもちろん、伝えたいことや当事者の気持ちをできるだけストーリーに反映し、デザインも親しみやすく楽しんでもらえるよう心がけています。」
かつて家族の会会報で行った小学生から高校生の座談会の内容も参考にし、ストーリーやクイズ、解説の全体を通して、子どもたちの視点を大切にしたそうです。
実際に、地域包括支援センターの方から「分かりやすい」という声をいただいたり、子どもから「絵が可愛い」という声をいただいたりと、嬉しい感想も寄せられているようです。
▲『認知症こどもサイト』ストーリーの一画面

▲『認知症こどもサイト』ストーリーの一画面

地域との連携により、更なる周知を目指す

サイトの周知に向けて、全国の市町村や福祉教育関係者へ連携・働きかけを行っているという家族の会。成果の一つとして、厚生労働省の公式サイト(※2)にて「認知症こどもサイト」のリンクが掲載されています(2023年5月時点)。
それでも、まだ更なる周知が必要だと芦野さんは言います。
「徐々に広がりは見せていますが、反応は多くはなく、特に個人の家庭にはまだ行き届いていません。そのため引き続きサイトを広める活動を行っていきたいと思います。」
次なるステップとして、中学生向けのコンテンツも考えているという家族の会。今後の活動にも注目です。

認知症の人や高齢者がリスペクトされる、優しい社会へ

家族の会では、「認知症こどもサイト」以外にも、マンガでの解説冊子を作成したり紙芝居を用意したりしている支部もあり、子どもへ認知症を知ってもらう取り組みを進めています。
このように精力的に活動を行っている家族の会ですが、最後に芦野さんへ「認知症についてもっと知って欲しいこと」を伺いました。
「認知症だけでなく、歳をとること、病気や障がいを持つことは誰にでも起こりえることです。昨今、高齢者や障がいを抱える人の立場が弱くなるような、心無い発言をする大人が見受けられます。同じ社会の中で生活する一人の人間として、誰もがリスペクトされる優しい社会になって欲しいと心から願っています。」
※1:認知症こどもサイト 公式ページ
https://alzheimer.or.jp/kodomo/
生23-1911,商品開発G
芦野 正憲さん

芦野 正憲さん

文=北浦勝大

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