『認知症こどもサイト』を子どもの理解の架け橋に 【前編】

『認知症こどもサイト』を子どもの理解の架け橋に 【前編】

今回ご紹介するのは、公益社団法人「認知症の人と家族の会※1(以下、家族の会)」の芦野さんです。全国47支部を有する家族の会では、『認知症に関する正しい知識の普及、認知症の人とその家族に対する相談や交流の場の提供。電話相談、会員同士の情報交換のための会報発行、社会への啓発』などを中心に活動を行っています。
前編では家族の会の成り立ちと取り組みについて、後編では未来を担う子ども世代に向けた取り組み『認知症こどもサイト※2』について、お話を伺いました。

京都から始まった40年以上にわたる取り組み

2023年現在、会員数が1万人近い家族の会は、1980年に京都市で発足しました。
「40年以上前は『認知症』という言葉も無く、家族もどのように接すればいいのか分からないという状態でした。会社や近所に共有することもはばかられる。そんな中で、同じ悩みや不安を抱える人たちが自由に話したり相談したりできる場が必要だとして、今の家族の会が発足しました。」
こうして「交流」の必要性から立ち上がった家族の会は、2014年には47都道府県すべてに支部が設立されました。

正しい知識と交流が、生活の支えになる

認知症の人、そしてそのご家族がこれまでどおり自分らしい生活を送る上で重要なのは、「正しい知識と交流」だと芦野さんは言います。
「まず、自分だけじゃないんだと思えること。そして正しい知識を元に自由に話せる場が、生活を支えると考えています。家族の会では、つどいでの交流以外にも、会報誌の配布やご家族への電話相談等、当事者やそのご家族が一人にならないよう日々取り組んでいます。」
生活をしていれば当然不満や不安も生まれる。ただ溜め込むのではなく、相談したり吐き出したりできる場こそが、その人の心を少しでも楽にするのかもしれません。
2009年にお母様の認知症をきっかけに家族の会へ入ったという芦野さんも、そのような場の中で話を聞き、悩みを話したことで多くを救われたそうです。

様々な立場から「できること」を考える

家族の会には、認知症の人のご家族の他、医師・教師・介護者等多くの立場の方が参加されています。「認知症になっても、介護する側になってもできることを考えよう」をモットーに、様々な立場の方々が交流・活動を行っているそうです。
「例えば会報誌の場合だと医師や教育者側の声を活かして記事を作成したり、ある相談をいただいた際にはかつて経験した多くの当事者が適切なアドバイスを伝えたりと、各々がそれぞれの強みを活かせるよう心がけています。」
多様な立場の方々が参加している家族の会だからこそ、様々な課題や悩みに応えることができる。そして多くの相乗効果を生み出せるのでしょう。

子どもたちの理解から、より良い未来へ

未だ多くの課題を抱える認知症。より良い社会、未来のためには子どもたちの理解こそが重要だと芦野さんは言います。
「将来を担う存在として、子どもたちに認知症を知ってもらうことはとても大切です。その上で、現代は核家族化しています。認知症の人や高齢者を孤立させないためにも、認知症が『分からない』『こわい』ものじゃないと周知するべく、子ども世代に向けた活動にも力を入れています。」
後編では、未来を担う子ども世代への取り組み『認知症こどもサイト』について、お話を伺いました。
※1:公益社団法人 認知症の人と家族の会
https://www.alzheimer.or.jp/
※2:認知症こどもサイト 公式ページ
https://alzheimer.or.jp/kodomo/
生23-1910,商品開発G
芦野 正憲さん

芦野 正憲さん

文=北浦勝大

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