27歳から認知症の予防・治療に取り組み、現在メモリークリニックお茶の水にて院長を務める朝田さん。後編では、個人が普段から行える認知症との向き合い方について、ご紹介します。前編はこちら
認知症予防は、日々の生活習慣から
認知症にならないために、日々の生活においてどのようなことに気を付けたら良いのでしょうか。
「適度な運動・バランスの良い食事・社会交流というように、日常生活を健やかに過ごすことが予防に繋がります。その中で昨今注目されているのは睡眠です。アルツハイマー型認知症の患者の脳には、『アミロイドβ』という認知症を発症する要因とされるタンパク質が集まっている傾向があります。そのアミロイドβは、ノンレム睡眠時に脳内から排出される性質を持っていることから、睡眠を確保することが予防の一つとして挙げられます。」
“正しい睡眠時間”については、はっきりと解明されていませんが、一般的に7時間程度の睡眠が効果的だと言われています。
認知症発見のカギは、長年の趣味や習慣
家族や周囲が気にしていても、気付きにくい軽度認知症。物忘れや、繰り返し同じことを聞くこともサインではありますが、認知症の症状として明確に感じることは、日常生活において難しいかもしれません。
そんな中、異変を気付くカギは本人の「長年の趣味や習慣」にあるようです。
そんな中、異変を気付くカギは本人の「長年の趣味や習慣」にあるようです。
「長年続けてきた趣味や習慣を突然やめたり、『今日はいいや』と億劫になったりすることも、一つの例として挙げられます。このように、意欲や自主性がなくなったように見えることは、認知症の初期から見られる症状の一つです。」
本人だけでなく、一緒に受診する手段も
家族が認知症の異変に気付いてから診断に向かうまで、驚くことに二年ほど掛かる傾向にあるようです。
では、いざ異変を感じた際、ご家族の方はどのように向き合えば良いのでしょうか。
では、いざ異変を感じた際、ご家族の方はどのように向き合えば良いのでしょうか。
「まずは物忘れ外来へ行くこと。そのためにも、『ぼけた』等という直接的な言葉は避け、自分も心配だから一緒に外来へ行こうというように、横並びでいる姿勢でいて欲しいと思っています。本人の不安を煽ることは、かえって診断へ向かうことに対してネガティブに作用してしまうことがあると考えています。」
診断を身近にするためにも、目線を合わせて認知症と向き合う。このような姿勢が、早期発見への近道なのでしょう。
共に行い、互いに楽しめる時間を
ご家族や周囲の立場として認知症の人をサポートする際も、目線を合わせて「一緒に考えること」が重要であるようです。
「メモを取る、ということはよく言われていますが、なかなかメモを見返す人はいないように感じます。それよりも、朝に今日行うことを整理するミーティングを行うというように、考える機会をつくることが重要だと考えています。」
またコロナ禍により外出が難しい中でも、可能な範囲で外に出る機会を設けて欲しいと、朝田さんは言います。
「社会との接点を持つためにも、家に閉じこもるのではなく、外に出ることも大切なケアの一つです。クリニックに来院される方の中には、ピクニック感覚で散歩をした先でお弁当を食べたり、外出の一環として家族でクリニックへ訪れたりと、一緒に楽しむ工夫をされている方も多くいます。」
このように、認知症と向き合いながら前向きに生活を送るべく、日々工夫を行っている方も多いようです。
その人らしさは、人格の芯にあり続ける
最後に朝田さんへ、「認知症についてもっと知って欲しいこと」について伺いました。
「認知症になっても、その人らしさは人格の芯にあり続けるものです。人柄・功績・趣味、何であれ美徳だと感じたら、褒めてあげて欲しい。ありがたいと思われている、必要とされている、そういう想いが伝わると頑張れる。それは認知症であっても同じです。」
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