今回ご紹介するのは、認知症の早期発見と早期治療のための専門クリニック「メモリークリニックお茶の水※1」の院長、朝田隆さんです。
1982年から認知症予防や治療に取り組み、筑波大学や東京医科歯科大学医学部附属病院にて教授を務める等、研究の第一線で活躍し続ける朝田さん。前編ではクリニックでの取り組みについて、後編では個人が普段から行える認知症との向き合い方について、お話を伺いました。
1982年から認知症予防や治療に取り組み、筑波大学や東京医科歯科大学医学部附属病院にて教授を務める等、研究の第一線で活躍し続ける朝田さん。前編ではクリニックでの取り組みについて、後編では個人が普段から行える認知症との向き合い方について、お話を伺いました。
三本柱の認知症ケア体制
認知症の発見と治療を専門とした「メモリークリニックお茶の水」。具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。
「軽度認知症または認知症の診断を行う”物忘れ外来”、認知症を進ませないための”認知アップデイケア”、そしてアルツハイマー病治療薬として最近アメリカで承認された『ADUCANUMAB(アデュカヌマブ)※2』も含めて治験を行ってきました。」
このようにメモリークリニックお茶の水では、知見や最新医学を活用し”早期発見・早期治療・治療薬の治験”という三本柱の取り組みを行っています。
このようにメモリークリニックお茶の水では、知見や最新医学を活用し”早期発見・早期治療・治療薬の治験”という三本柱の取り組みを行っています。
個人にあわせたデイケアプログラム
更にデイケアにおいて、幅広いプログラムを提供していることもメモリークリニックお茶の水の特徴の一つです。
「症状の進行、そして本人の趣向やできることは人によってそれぞれです。そのため当院では、有酸素運動や体操といった運動系のプログラム、楽器の演奏やアートといった脳トレ系のプログラムを用意し、その人に合ったケアをできる体制を整えています。」
一方的にプログラムを提供するのではなく、その人と一緒にプログラムを決めていく。メモリークリニックお茶の水は、認知症の人自身が主体となれるような場所なのかもしれません。
心を支える、”自分だけじゃない”という実感
様々なプログラムからケアを行うメモリークリニックお茶の水ですが、施設内での交流も重要なことであると、朝田さんは言います。
「『同病相憐れむ』という言葉があるように、自分だけが苦しんでいるのではない、と実感できることがまずは重要だと思っています。あの人もいるから頑張ろう、そう思えることは大きな心の支えになります。その上で、非薬物でのケアや薬物のケアがある、というのが私たちの考えです。」
孤立させないことの重要性
交流が重要である一方、コロナ禍によりその機会が減ってしまっている実態もあるようです。
「本人やご家族の意向もあり、来院者数も五割近く減っている状況です。一度来なくなると、それが習慣化されてしまう。その結果、自宅に閉じこもり社会的な交流がなくなるのは、認知症の進行にとっても悪影響です。」
そこで朝田さんらが着手したのが、リモートでの交流でした。
「離れていてもケアができるよう『どこでもデイケア』という、体操や脳トレの動画を配信する取り組みを始めました。また、双方向の交流ができるようZoomを活用して一緒にレクリエーションをするという取り組みも行っています。しかし、パソコンでの操作が必要なリモートでの交流は、高齢の方にとって容易ではありません。そのため、より簡単にリモートで繋がれるよう、操作を簡略して接続ができるシステムを他団体と協力しながら、開発をしています。」
本人の声を引き出すことが、共生への一歩
多くの知見を踏まえ、日々の工夫からケアを行っているメモリークリニックお茶の水。今後行っていきたい取り組みについて伺いました。
「認知症の特徴の一つとして『自分の意見や希望が言えない』ということが挙げられます。今後の活動として、決められたプログラムを行うのではなく、本人から自発的に意向を引き出し、ケアに組み込めればと考えています。」
そこで朝田さんが注目しているのは、回想法によるアプローチです。
「例えば懐かしい音楽を流したとき、自身の記憶からもう一度ドラムを叩いてみたいと自発的に意向が引き出せる、というようなことを期待しています。そうした回想法によるアプローチ・レクリエーションを通じて、よりその人に合ったケアを行っていきたいと思います。」
一人ひとりに合ったケアから、その人らしい生活へ。朝田さんらメモリークリニックお茶の水の取り組みは続きます。
後編では、個人が普段から行える認知症との向き合い方について、朝田さんへお話を伺いました。
※1:医療法人社団 創知会 メモリークリニックお茶の水ホームページ
https://memory-cl.jp/
https://memory-cl.jp/
※2:アデュカヌマブ=エーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の治療薬。アメリカでは、2021年6月8日FDA(米国食品医薬品局)より治療薬として承認。日本では、現在厚生労働省の承認審査中(2021年9月10日時点)。
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