ある音楽を聴くと、よく聴いていた頃の思い出が蘇る。そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。今回ご紹介するのは、そんな「音楽の力」を使って認知症の方々と向き合う、日本音楽療法学会認定音楽療法士※1の吉良まゆみさん。音楽療法の可能性についてお話を伺いました。
音楽を聴くと大切な思い出にもう一度出会う
音楽療法とは「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障がいの回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること※2」。具体的にはどんなお仕事なのでしょうか。
「現在、認知症の完治は難しいと言われていますよね。音楽療法を通して、認知症と共存しながら出来るだけ居心地良く、楽しく生きていくことができるよう、お手伝いをしています。」
吉良さんが普段音楽療法を行っている福祉施設では、体操やゲーム、手芸など様々なアクティビティを実施しているそうですが、音楽ならではの効果にはどういったものがあるのでしょうか。
「例えば、好きな曲を聴くと、その時の情景や思い出が自然と蘇る経験をしたことはありませんか?急に涙が出てくるなど、良いことも悲しいことも含めて、感情が溢れてきます。認知症の方も同様なのです。日常のことを忘れてしまっても、昔聴いた曲をきっかけに当時のことを思い出し、イキイキと話し始めてくださるのです。」
「現在、認知症の完治は難しいと言われていますよね。音楽療法を通して、認知症と共存しながら出来るだけ居心地良く、楽しく生きていくことができるよう、お手伝いをしています。」
吉良さんが普段音楽療法を行っている福祉施設では、体操やゲーム、手芸など様々なアクティビティを実施しているそうですが、音楽ならではの効果にはどういったものがあるのでしょうか。
「例えば、好きな曲を聴くと、その時の情景や思い出が自然と蘇る経験をしたことはありませんか?急に涙が出てくるなど、良いことも悲しいことも含めて、感情が溢れてきます。認知症の方も同様なのです。日常のことを忘れてしまっても、昔聴いた曲をきっかけに当時のことを思い出し、イキイキと話し始めてくださるのです。」
音楽療法を通して、生まれていく自己肯定感
当時のことを自然と思い出させてくれる、音楽療法。日々、思い出せない瞬間にもどかしさを感じている認知症の方にとっては、とても価値のある体験となるようです。
「例えば、『上を向いて歩こう』を皆で歌うとします。『誰が歌っていましたっけ?』と問いかけると、すぐに答えられる方もいれば、そうでない方もいます。すぐ答えが出てこなくても焦る必要はありません。リズムに乗って体を動かしているうちに思い出す方もいらっしゃいます。歌うこと、聴いてみること、体を動かすこと、様々なきっかけを重ねていく中で『坂本九さん』という答えを思い出していくのです。」
「例えば、『上を向いて歩こう』を皆で歌うとします。『誰が歌っていましたっけ?』と問いかけると、すぐに答えられる方もいれば、そうでない方もいます。すぐ答えが出てこなくても焦る必要はありません。リズムに乗って体を動かしているうちに思い出す方もいらっしゃいます。歌うこと、聴いてみること、体を動かすこと、様々なきっかけを重ねていく中で『坂本九さん』という答えを思い出していくのです。」
ほんの少しのことでも、思い出すことをきっかけに認知症の方々の表情が明るくなるのだと、吉良さんは言います。
「思い出すことをきっかけに、『思い出せた!』『こんなに会話ができている!』という喜びの実感が会話を盛り上げ、自己肯定感へと繋がって、グループセッションに参加した仲間たちの間でどんどん会話や交流が生まれていきます。思い出せないことがあったり、瞬時に物事が理解できなかったり、制約のある生活を送っているからこその喜びなのでしょう。」
「思い出すことをきっかけに、『思い出せた!』『こんなに会話ができている!』という喜びの実感が会話を盛り上げ、自己肯定感へと繋がって、グループセッションに参加した仲間たちの間でどんどん会話や交流が生まれていきます。思い出せないことがあったり、瞬時に物事が理解できなかったり、制約のある生活を送っているからこその喜びなのでしょう。」
脳を活性化させる、セッション内容の秘訣
音楽療法士の役割はファシリテーションが中心。上手く歌うための指導や強制はせず、あくまでも「案内人」という立ち位置を大切にしているとのこと。具体的にはどんなグループセッションが行われているのでしょうか?
「前半は、声を出せるよう、軽い運動でウォーミングアップが中心です。例えば、その時節の花々、風景、行事などのお話から入ったりします。そして、季節にまつわる歌を、手話をしながら歌います。考えて、歌い、記憶するという流れの中で、脳を活性化させていくのです。」
「前半は、声を出せるよう、軽い運動でウォーミングアップが中心です。例えば、その時節の花々、風景、行事などのお話から入ったりします。そして、季節にまつわる歌を、手話をしながら歌います。考えて、歌い、記憶するという流れの中で、脳を活性化させていくのです。」
「後半は、昭和歌謡と一緒にリズム楽器を演奏します。昭和歌謡は皆さん大好き。曲に合わせて、太鼓や民族楽器などを触っていただき、自由に演奏してもらいます。制限を加えると、音楽が嫌いになってしまうので、出来るだけ『こういう風に演奏しましょう』といったことは言いません。自由に表現を楽しむことが重要。しばらく経つと、グループの中でお互いがどのような表現をする人なのかが見えてきます。楽器はお互いを理解するのに、とても良いツールなんです。」
音楽療法士が大切にする、大先輩への敬意
音楽を自由に楽しみ、居心地の良い空間づくりを目指している吉良さん。どんなことを大切にお仕事をされているのでしょうか。
「認知症の方は少しずつ忘れることが増えていき、不安なことが多いと思います。音楽療法士は介護士の方とは違い、触れ合う時間がとても少ないからこそ大事にしていることが2つあります。ひとつは、人生の大先輩に対しての『敬意』。そして、認知症の方々の言葉や、動き、視線などを感じ取ること。つまり表現が生まれた瞬間を見逃さないことです。音楽療法を通しての効果も大切ですが、出会いをきっかけに多くの方に自己肯定感を持っていただきたいです。」
後編では、音楽療法によって実際に変化があったご家族のエピソードや、日本と海外における音楽療法の認知度の違いなどについてお伺いします。
後編はこちら
「認知症の方は少しずつ忘れることが増えていき、不安なことが多いと思います。音楽療法士は介護士の方とは違い、触れ合う時間がとても少ないからこそ大事にしていることが2つあります。ひとつは、人生の大先輩に対しての『敬意』。そして、認知症の方々の言葉や、動き、視線などを感じ取ること。つまり表現が生まれた瞬間を見逃さないことです。音楽療法を通しての効果も大切ですが、出会いをきっかけに多くの方に自己肯定感を持っていただきたいです。」
後編では、音楽療法によって実際に変化があったご家族のエピソードや、日本と海外における音楽療法の認知度の違いなどについてお伺いします。
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※1:日本音楽療法学会認定音楽療法士は、一般社団法人日本音楽療法学会が与える民間の資格。3年制の専門学校、4年制の大学もしくは学会が提供する認定講座を受講し、筆記試験と面接試験に合格する必要がある。学会認定音楽療法士の人数は2019年時点で約2,600名余り。
※2:一般社団法人日本音楽療法学会の公式ホームページより。(https://www.jmta.jp/)
※3:株式会社Leaf音楽療法センター:福祉施設および福祉事業における音楽療法サービスの提供や高齢者のための訪問音楽療法サービスの提供を行う。所属音楽療法士は40名。(https://leaf-mt-center.com/)
※2:一般社団法人日本音楽療法学会の公式ホームページより。(https://www.jmta.jp/)
※3:株式会社Leaf音楽療法センター:福祉施設および福祉事業における音楽療法サービスの提供や高齢者のための訪問音楽療法サービスの提供を行う。所属音楽療法士は40名。(https://leaf-mt-center.com/)
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