必要な人へ適切な支援を。神戸発の取り組みで、やさしいまちの実現へ【前編】

必要な人へ適切な支援を。神戸発の取り組みで、やさしいまちの実現へ【前編】

認知症の主な要因の一つである加齢。高齢化が進む現代において、2012年には約460万人だった認知症患者数は、2025年には約700万人に達すると予測されています(『平成29年度高齢者白書※1』)。
認知症が日々身近になっている昨今、各地方自治体で様々な取り組みが行われています。今回ご紹介するのは、全国に先駆けた神戸発の取り組み、『認知症神戸モデル※2』です。
『認知症神戸モデル』の内容や神戸市の想いについて、神戸市福祉局介護保険課 認知症対策担当係長の竹野さんへお話を伺いました。

やさしいまちづくりを支える『神戸モデル』とは

神戸モデルとはどのような制度なのでしょうか。
「まず神戸モデルの目的は、認知症の方やそのご家族が安心して暮らし続けられる、やさしいまちの実現です。
具体的な施策として、65歳以上の市民が認知症の検診を自己負担ゼロで受けられる『診断助成制度』と、万が一その人が事故を起こした場合に賠償責任保険や見舞金により救済される『事故救済制度』。これら二つの制度から成り立っています。」
早期受診の支援と、診断後の生活へのケアの両輪から成る神戸モデル。制度に係る費用は将来世代に先送りすることなく、市民一人当たり年額400円の超過課税によりまかなわれているとのことです。
必要な人に適切な支援を届けることが、安心な暮らし=やさしいまちに繋がると、竹野さんは言います。

市長の想いが、神戸発の制度をつくった

早期診断と事故救済が一連となった取り組みとして注目される神戸モデルですが、発足のキッカケの一つとなったのは、とある事故でした。
「2007年に認知症の方が電車にはねられ死亡した事故で、鉄道会社側が損害賠償を求めてそのご家族を提訴したという件がありました。9年間の裁判を経て、結果的に家族に賠償責任は無いと判決が出ましたが、認知症の方による事故で家族らが責任を負う可能性が残りました。一方加害者側に賠償責任がなければ、被害者は救済されません。このニュースを受け、『悲嘆に暮れるご家族のみが被害の責任を負うことになるのは、公平の見地からも適切とは言えないのではないだろうか。また、認知症は加齢により誰もがなり得る病気であり、地域社会全体で負担を分かち合う仕組みが求められるのではないか』という神戸市長の問題意識から、認知症神戸モデルが創設されました。」
驚きなのは、認知症の人の賠償責任を巡る一件は、兵庫県ではなく他県で起きたものだということです。神戸市の認知症への課題意識の高さがうかがえます。
▲阪神・淡路大震災から20年をキッカケに生まれた、 「...

▲阪神・淡路大震災から20年をキッカケに生まれた、 「神戸の魅力は人である」という思いを集約したメッセージ

診断を安心への第一歩に

2019年から開始し3年が経つ(2022年時点)神戸モデルですが、地域の方々からはどのような声があがっているのでしょうか。
「診断助成を利用した方からは、『無料なので受診しやすい』『毎年受診できる』や『身近なかかりつけ医で気軽に受診できるのが良かった』等の声をいただいています。」
自己負担ゼロであること、また認知機能検診の登録医療機関が453カ所(2022年4月時点)もあることが、受診のハードルを下げているのでしょう。
また、高齢の親やパートナーに受診を勧めやすい、というご家族からの声もいただいているとのことです。
「事故救済制度に関しては、『事故を起こしてしまったり他人の物を壊すような不安があったが、安心して外出できるようになった』等の声もいただいております。」

正しい知識と適切なケアが、安心できる生活のカギ

認知症の人が安心できる暮らしを支える『神戸モデル』ですが、課題もあるようです。
「早期発見のハードルを下げる一方で、受診自体を拒否したり不安を言い出せなかったりする人もいます。」
認知症であることを知りたくはない、あるいは認知症と診断されると自分ではなくなってしまうと考える方もいると、竹野さんは言います。
「認知症になってもその人であることに変わりはありません。早くから認知症と向き合うことは、その後の生活に役立つことがきっとあるはずです。不安が少しでもあれば、診断を受けて欲しい。そのためにも、認知症の正しい理解を広め、相談や診断のハードルを低くする取り組みも日々行っています。」
後編では、神戸モデルや認知症の理解をどのように広めているか、数々の工夫や試行錯誤について、お話を伺いました。
※1:内閣府『平成29年度高齢者白書』ホームページ
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_2_3.html
※2:神戸市福祉局介護保険課 『認知症に人にやさしいまち 神戸モデル』ホームページ
https://kobe-ninchisho.jp/
生22-3833,商品開発G
竹野 嘉朗さん

竹野 嘉朗さん

文=北浦勝大

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