「毎日の入浴」で要介護・認知症リスクを減らせる!?

「毎日の入浴」で要介護・認知症リスクを減らせる!?

入浴は、食事や家事、排泄、歯みがきといった日常動作の一つです。実は毎日の入浴が、高齢者の要介護リスクや認知症リスクを減らす効果があるということが、近年明らかになりました。この記事では、入浴がなぜ高齢者の健康に良いのか解説していきます。

毎日の入浴で要介護リスクは約30%減る!

2018年11月、国内の研究で、「入浴の頻度が週7回以上の高齢者は、週2回以下しか入浴しない高齢者に比べて要介護認定リスクが約30%有意に低い」ことが発表されました。

この研究は2010年8月?2012年1月、北海道や愛知県などの18の自治体で要介護認定を受けていない65歳以上の男女高齢者約1万4千人を対象に、夏と冬それぞれの入浴頻度と要介護認定の関連性について、約3年間追跡調査したものです。

調査期間中、約1200人の高齢者が新たに要介護認定を受けましたが、「夏に週7回以上入浴していた高齢者は、週0~2回の人より要介護認定のリスクが約28%減り、冬の入浴でも約29%減った」という結果が得られました。

入浴が要介護を予防する理由は?

では、毎日入浴している高齢者が、入浴頻度が少ない高齢者より要介護リスクが減るのはなぜでしょうか?理由としては、次のことが考えられます。

■リラックス効果
お風呂に入ると眠りが深くなってリラックス効果があり、うつ病の発症を防ぐなど、メンタルに良い影響をもたらすと考えられています。

■認知症予防効果
リラックス効果に加え、入浴によって脳への血行が促進されると、認知機能の低下を防ぐ効果があるといわれています。ある研究では「サウナの入浴習慣が多い人も認知症の発症リスクが減っている可能性がある」という結果が得られており、今後も研究が発展することが期待されます。

■抗炎症作用
入浴で体温が上昇したときに産出される「ヒートショックプロテイン」というタンパク質の一種には細胞の損傷を防ぐ作用や抗炎症作用があり、これが高齢者の健康維持につながるのではないかと考えられています。

■運動効果
入浴は、しゃがんだり立ったりすることで体力を使うため、リハビリ的な効果が期待できます。こうした一連の動作と温熱刺激には、ある程度のトレーニング効果が期待できますので、健康にとっても良い影響が出る可能性があります。

■心機能の改善効果
お風呂に浸かって水圧を受けると、末梢の血管に圧力がかかって血液が胸の方に集まってきます。この現象が心機能に良い影響を与えると考えられています。

ただし、熱すぎるお湯や長風呂は心臓に負担をかけますし、心臓発作を起こす原因にもなります。お風呂の温度は38~40度のぬるま湯に10分まで浸かることを目安にして、入浴の前後にはコップ一杯の水を飲むようにしてください。

入浴には動脈硬化の改善・予防効果も!?

適度な入浴は、動脈硬化を改善する効果があるといわれています。

愛媛大学医学部附属病院の抗加齢・予防医療センターが行った、元気な中高年以降の人を対象にした調査によれば、「週5回以上の入浴をしている人は、4回以下の人に比べ、心肺機能や動脈硬化の指標が低い」?つまり動脈硬化の進展が少ないという結果が得られたそうです。

動脈硬化は脳出血や脳梗塞の原因であり、脳血管性認知症を招くリスク因子です。この側面でも日々の入浴は認知症予防につながることが期待でき、要介護のリスクを下げることにつながります。

おわりに:動脈硬化による認知症や要介護を予防するために、毎日入浴を

高齢者の入浴には「ヒートショック」などのリスクがありますが、安全に配慮した入浴を心がければ、要介護や認知症、動脈硬化リスクの低減など様々な健康効果が期待できます。「お風呂は面倒だからたまにしか入らない」という方は、ぜひ日々のリラックスタイムとして入浴習慣を取り入れてみてください。

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