認知症の治療薬にはどのようなものがある? 効果や副作用は?

認知症の治療薬にはどのようなものがある? 効果や副作用は?

認知症の治療法としては、薬を使う薬物療法が実施されることがあります。では、治療の際には、どのような薬がどのような目的で用いられるのか、効能や副作用なども含めて解説していきます。

治療薬で認知症は治る?

認知症を完全に治す治療法は、まだ見つかっていません。ですが、治療薬を投与することによって、できるだけ症状を軽くして、進行の速度を遅らせることが期待できます。

認知症の多くは、以下で説明している「三大認知症」の3種類に分けられます。

■アルツハイマー型認知症:認知症の約半数を占めるタイプ。海馬を中心に脳の神経細胞が死滅し、認知機能障がいや物盗られ妄想、徘徊などの症状が見られるようになる。
■レビー小体型認知症:認知症の約20%を占めるタイプ。レビー小体という特殊な物質ができることで脳の神経細胞が死滅し、認知機能障がいや妄想、睡眠障がい、パーキンソン症状(手足の震えなど)が見られるようになる。
■脳血管性認知症:認知症の約15%を占めるタイプ。脳梗塞や脳出血などが原因で脳の一部が壊死し、認知機能障がいや手足のしびれ、感情の抑制が効かないといった症状が見られるようになる。

これらの認知症のうち、現時点での認知症の治療薬は、基本的に「アルツハイマー型認知症」に対するものです。「レビー小体型認知症」や「脳血管性認知症」自体を対象にした治療薬はありませんが、これらの認知症にも薬を用いることで、進行をゆるやかにできる場合があります。

認知症の治療薬にはどんな種類がある?

認知症の主な治療薬としては、以下のものが挙げられます。

■ドネペジル塩酸塩(アリセプト®など)
アリセプト®などのコリンエステラーゼ阻害薬は、アセチルコリン(重要な神経伝達物質)を分解する酵素の働きを抑え、脳内のアセチルコリンの濃度を高める作用を持つ薬です。錠剤、ゼリー、ドライシロップなど様々な種類があり、主に軽度~重度のアルツハイマー型認知症の患者に処方されます。

認知症の中核症状(脳細胞の死滅や機能低下によって起こる記憶障がい、見当識障がい、理解・判断力の低下、実行機能障がい、言語障がい、認知機能障がい)を一時的に改善し、認知症の進行を遅らせる効果があるといわれています。

■ガランタミン臭化水素酸塩(レミニール®)
レミニール®は、前述のコリンエステラーゼ阻害薬の作用に加え、脳内のアセチルコリンを受け取る器官の感受性を高め、神経の伝達を改善する作用が見込める薬です。錠剤、液剤などがあり、主に軽度~中等度のアルツハイマー型認知症の患者に処方されます。

認知症の進行を遅らせるのに有効と考えられており、できるだけ早期発見・治療をし、少しでも軽症の段階に留めることが大切です。

■リバスチグミン(イクセロンパッチ®、リバスタッチパッチ®)
こちらもコリンエステラーゼ阻害薬の一種です。皮膚に貼るパッチ製剤で、主に軽度~中等度のアルツハイマー型認知症の患者に処方されます。

■メマンチン塩酸塩(メマリー®)
メマリー®は、脳内のグルタミン酸(記憶や学習に関わる神経伝達物質の一種)の過剰分泌による脳神経細胞の死滅を防ぎ、従来の記憶形成に近い働きを促す治療薬です。錠剤や口腔内崩壊錠などがあり、主に中等度~重度のアルツハイマー型認知症の患者に処方されます。

認知症の治療薬の副作用は?

アリセプト®、レミニール®、イクセロンパッチ®、リバスタッチパッチ®では、副作用として吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛などが起こることがあります。またメマリー®の場合、めまいや便秘、頭痛、体重減少などの副作用が見られる場合があります。

なお、認知症の治療薬は薬の効果と副作用を定期的にチェックしながら、種類等を調整していきます。気になる変化があれば、必ず医師に相談しましょう。

おわりに:認知症の治療薬は、早い段階での投与が重要!

認知症を根治させる薬は現在のところありませんが、薬の投与によって、症状を改善し病気の進行を遅らせることが期待できます。なるべく初期の段階で症状を留めることが重要なので、「認知症かも?」と思った場合は、お近くの専門外来で検査を受け、早期発見に努めましょう。

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