災害時への食の備え

災害時への食の備え

日本は地震や台風など自然災害の多い国です。災害発生直後は、食品が入手できなかったり、水道・電気・ガスなどのライフラインが寸断されたり、食生活にも支障が出る可能性があります。
厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査」によれば、災害時に備えて非常用食料を用意している世帯の割合は53.8%、その中で3日以上の非常用食料を用意している世帯は69.9%でした。
不安な中でも、いつもの温かい食事があれば、気持ちがほっと落ち着きます。日頃から、自分自身と家族の「いざという時の食の確保」のために、十分な備えをしておくことが必要です。

どのくらいの備蓄が必要でしょうか

内閣府の「首都直下地震等による東京の被害想定」によれば、各ライフラインの復旧目標日数は、電気で6日、上水道で30日、ガスで55日となっています。また、災害支援物資が3日以上到着しないことや、物流機能が滞り、スーパーマーケットやコンビニなどで1週間以上、食料品等が入手できないことも想定されます。
このため、最低でも3日分、大災害発生時に備えるならば1週間分の食料を人数分、家庭備蓄することが望ましいとされています。

ローリングストックによる備蓄のすすめ

災害時のための「非常食」だけではなく、日常生活で使用しながら災害時にも備える「ローリングストック法」による備蓄もおすすめです。これは、普段食べている食材や加工品を少し多めに買い置きし、賞味期限などを確認しながら消費して、使った分だけ買い足す、という消費と購入を繰り返すことにより、常に一定量の食品が家庭に備蓄されている状態を保つ方法です。
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(執筆者作成)

備蓄食品を選ぶポイント

災害直後は、インスタント麺、パンやごはんなどの炭水化物中心になりがちで、栄養バランスが偏り、便秘、口内炎など体調不良を起こしやすくなります。缶詰や野菜ジュース、日持ちする野菜、乾物など、たんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維を補える食品も備えるよう心掛けましょう。
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配慮が必要な方の備蓄食品についても考えましょう

乳幼児、妊産婦、高齢者、食べる機能(噛むことや飲み込み)が弱くなった方や、糖尿病、高血圧、腎臓病等の慢性疾患の方、食物アレルギーの方は、備蓄食品についても、特別な配慮が必要になります。災害時には物流機能の停滞により、特殊食品も手に入りにくくなります。また、心臓や血圧などの循環器系は災害発生によるストレスの影響を受けやすい臓器系の一つであり、平常時にも増して健康管理への配慮が必要となります。

災害時の食の備えに関する情報サイト

農林水産省のホームページの「家庭備蓄ポータル」https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/ では、
一般向け・要配慮者向けのパンフレット『災害時に備えた食品ストックガイド』や家庭での備蓄食品の実践例など、さまざまな情報を公開しています。ぜひ活用しましょう。
和洋女子大学家政学部健康栄養学科准教授
管理栄養士 博士(医学)髙𣘺 佳子
提供元:和洋女子大学、株式会社ライフケアパートナーズ

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