"人生100年時代"と言われている現代、一人ひとりが安心して・自分らしく、より豊かに過ごすためには、誰もが関わる可能性のある認知症について正しい知識をもつとともに、明るく前向きに過ごすためのヒントを得ることが必要です。
今回は、人生100年をより健康のまま長生きしていくために必要な「フレイル」、「オーラル・フレイル」についてご紹介します。
今回は、人生100年をより健康のまま長生きしていくために必要な「フレイル」、「オーラル・フレイル」についてご紹介します。
中年期をすぎたら"フレイル"予防が大事!
健康を維持していくために大事なことは様々あります。食事(栄養)や運動に気をつけて、生活習慣病にならないようにする、いわゆる"メタボ(メタボリックシンドローム)"にならないように気をつけることは代表的なことでしょう。これには、若いときから多くの人が心がけていることかと思います。しかし、長い人生を元気なまま自分らしく自立して暮らし続けていくには、もう一つ大事なことがあります。それが「フレイル」の予防です。
フレイルとは、簡単に申し上げると、身体が「虚弱」(Frailty)になっていくことです。人間はもともと"ヒト(動物)"である以上、加齢とともに心身機能が弱くなっていくことは避けられません。年を重ねれば体力が低下する、足腰が弱くなる、こうした「年を重ねるに従って徐々に心身の機能が低下していくこと」を表した概念が「フレイル」というものです。2014年頃から日本老年医学会により提唱されています。
フレイルになる最大の要因は、骨格筋の「サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)」、つまり筋肉(力)が落ちていくことが挙げられます。筋肉(力)が落ちると、身体機能が低下して活動が少なくなり、エネルギー消費量も減り、食欲や食事摂取量も減り、低栄養や体重減少が進むといった負の連鎖によってフレイルが進行します。
では、このフレイルを予防するためには何を心がければよいのでしょうか。様々なことが挙げられますが、"「社会性」の低下を防ぐ"ということが特に大事と言えます。高齢になって、仕事をリタイアする、子育てを終えるなど、生活パターンが変化すると、社会(他者)との接点の量が減少しがちになります。その量が少なくなると、おのずと運動量が減少し、精神的にもハリを失いやすく、狭い範囲での生活、縮こまった生活を送りがちになります。こうした外出機会も減り、家の中ばかりの閉じこもるような生活を送るとフレイルが進行しやすくなります。昨今のコロナ禍により巣ごもり的な暮らしを強いられている人は少なくありませんが、特に高齢者はフレイルが進行しないように日々の過ごし方を工夫する必要があるでしょう(近所での散歩や自宅での運動習慣、感染予防に留意したうえでの他者との交流など)。
フレイルとは、簡単に申し上げると、身体が「虚弱」(Frailty)になっていくことです。人間はもともと"ヒト(動物)"である以上、加齢とともに心身機能が弱くなっていくことは避けられません。年を重ねれば体力が低下する、足腰が弱くなる、こうした「年を重ねるに従って徐々に心身の機能が低下していくこと」を表した概念が「フレイル」というものです。2014年頃から日本老年医学会により提唱されています。
フレイルになる最大の要因は、骨格筋の「サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)」、つまり筋肉(力)が落ちていくことが挙げられます。筋肉(力)が落ちると、身体機能が低下して活動が少なくなり、エネルギー消費量も減り、食欲や食事摂取量も減り、低栄養や体重減少が進むといった負の連鎖によってフレイルが進行します。
では、このフレイルを予防するためには何を心がければよいのでしょうか。様々なことが挙げられますが、"「社会性」の低下を防ぐ"ということが特に大事と言えます。高齢になって、仕事をリタイアする、子育てを終えるなど、生活パターンが変化すると、社会(他者)との接点の量が減少しがちになります。その量が少なくなると、おのずと運動量が減少し、精神的にもハリを失いやすく、狭い範囲での生活、縮こまった生活を送りがちになります。こうした外出機会も減り、家の中ばかりの閉じこもるような生活を送るとフレイルが進行しやすくなります。昨今のコロナ禍により巣ごもり的な暮らしを強いられている人は少なくありませんが、特に高齢者はフレイルが進行しないように日々の過ごし方を工夫する必要があるでしょう(近所での散歩や自宅での運動習慣、感染予防に留意したうえでの他者との交流など)。
"オーラル・フレイル予防"も大事!
フレイルに関連してもう一つ大事なことがあります。それは「オーラル・フレイル」の予防です。提唱者は東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授(機構長)、辻哲夫特任教授を中心としたワーキンググループ*1で、日本歯科医師会も当概念の普及に向けた積極的な啓発活動を展開しています 。
「オーラル・フレイル」とは、直訳すると「口のフレイル」、「歯・口の機能の虚弱」になります。先ほどフレイルに至るプロセスについては、社会性の低下や筋肉(力)との関係が大きいことを述べましたが、その筋肉(力)の低下に「歯・口の機能低下」が深く関係していることが指摘されています。これは飯島他が行った「高齢期における虚弱化の原因を追究する大規模調査(縦断追跡コホート研究)*2」から導き出されたことです。
具体的にどういうことかというと、歯・口の健康をおろそかにすると、噛む力や舌の動きが悪くなり、栄養摂取の面で支障を及ぼすとともに、滑舌が悪くなることで人との交流を避けるようになります。その結果、家に閉じこもりがちな生活を送ることで筋肉(力)の低下につながり、更には生きがいまでも失うような負の連鎖を招いてしまう可能性がある、ということです。なお、オーラル・フレイルは以下のように定義づけられています。
*1 平成25 年度厚生労働省老人保健健康増進等事業「食(栄養)および口腔機能に着目した加齢症候群の概念の確立と介護予防(虚弱化予防)から要介護状態に至る口腔ケアの包括的対策の構築に関する研究」で設置されたワーキンググループ
*2 千葉県柏市における65歳以上の地域在住高齢者2,044名を対象とした「大規模虚弱予防研究(通称「柏スタディー」)」
「オーラル・フレイル」とは、直訳すると「口のフレイル」、「歯・口の機能の虚弱」になります。先ほどフレイルに至るプロセスについては、社会性の低下や筋肉(力)との関係が大きいことを述べましたが、その筋肉(力)の低下に「歯・口の機能低下」が深く関係していることが指摘されています。これは飯島他が行った「高齢期における虚弱化の原因を追究する大規模調査(縦断追跡コホート研究)*2」から導き出されたことです。
具体的にどういうことかというと、歯・口の健康をおろそかにすると、噛む力や舌の動きが悪くなり、栄養摂取の面で支障を及ぼすとともに、滑舌が悪くなることで人との交流を避けるようになります。その結果、家に閉じこもりがちな生活を送ることで筋肉(力)の低下につながり、更には生きがいまでも失うような負の連鎖を招いてしまう可能性がある、ということです。なお、オーラル・フレイルは以下のように定義づけられています。
*1 平成25 年度厚生労働省老人保健健康増進等事業「食(栄養)および口腔機能に着目した加齢症候群の概念の確立と介護予防(虚弱化予防)から要介護状態に至る口腔ケアの包括的対策の構築に関する研究」で設置されたワーキンググループ
*2 千葉県柏市における65歳以上の地域在住高齢者2,044名を対象とした「大規模虚弱予防研究(通称「柏スタディー」)」
一見、フレイルとは直接関係ないように思われる歯・口の機能低下が起点(原因)となって、社会性の低下、生活範囲の縮小、精神性の低下、低栄養、身体機能の低下をもたらしてしまう可能性があるということです*4。「老いるのは"足から"(身体能力面を考慮して)」とよく言われますが、実は「"口から"老いる」が正解なのかもしれません。フレイルの予防のためには、社会性の維持や足腰のトレーニングに加えて、「歯・口の健康」にも予防的に取組んでいくことが必要です。そのためには、まず定期的な歯科検診の受診をお薦めします。
*3 日本歯科医師会ホームページ「歯科診療所におけるオーラル・フレイル対応マニュアル2019年版」より https://www.jda.or.jp/dentist/oral_flail/pdf/manual_sec_01.pdf
*4 前田展弘「老いるのは下から?上から?~注目される『オーラル・フレイル』という新概念」(ニッセイ基礎研・研究員の眼、2016.5.13)
*3 日本歯科医師会ホームページ「歯科診療所におけるオーラル・フレイル対応マニュアル2019年版」より https://www.jda.or.jp/dentist/oral_flail/pdf/manual_sec_01.pdf
*4 前田展弘「老いるのは下から?上から?~注目される『オーラル・フレイル』という新概念」(ニッセイ基礎研・研究員の眼、2016.5.13)
執筆者:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 前田 展弘