【長生き応援シリーズ⑫】 地域が創る新たな高齢者のつながり

【長生き応援シリーズ⑫】 地域が創る新たな高齢者のつながり

"人生100年時代"と言われている現代、一人ひとりが安心して・自分らしく、より豊かに過ごすためには、誰もが関わる可能性のある認知症について正しい知識をもつとともに、明るく前向きに過ごすためのヒントを得ることが必要です。
今回は、"高齢期に新たなつながりを築く方法"について、事例を踏まえてお話したいと思います。

リタイア後の「仕事」の場が産み出す新たなつながり~柏市「生きがい就労事業」~

人との関係は幸せの重要な要素であり、社会とのつながりが長生きにも影響します(「【長生き応援シリーズ⑪】 幸せとつながり」より)。人生100年時代を歩んでいく上で、人や社会とのつながりは重要です。しかし、高齢期は退職や友人らとの永遠の別れ(死別)などで、そのつながりを失う機会は少なくありません。失うだけでなく、新たに築いていかなければ、やがて「孤立」という現実を迎えてしまう可能性もあります。

高齢期に新たなつながりを築く方法は、地域活動に参加する、趣味のサークルに加入する等、様々ありますが、今回ご紹介したいのは「仕事」を通じた新たなつながり方です。その一つの事例として、東京大学高齢社会総合研究機構と千葉県柏市、UR都市機構の3者が2009年から取組んでいる「生きがい就労事業」というものがあります。

これは、千葉県柏市における「長寿社会のまちづくり」プロジェクトの一環として進められたのですが、きっかけは2008年当時、地域課題として深刻化していた「高齢者の孤立」の問題です。地域における人と人とのつながりが非常に希薄だったのです。千葉県柏市は東京都の北東部に近接する東京都のベッドタウンで、住民の多くは都内に働きに出かけ、自宅には寝に帰るだけといった生活を送っていたことが背景にあります。その結果、リタイアした後、地域を見渡しても友人や知り合いは誰もおらず、「やることがない」「行くところがない」「会いたい人もいない」といった"ない・ないづくし"の生活となり、自宅にとじこもりがちになってしまう高齢者が少なくなかったのです。そこでプロジェクトメンバーは、「どうすればそうした方々に自然と外に出てもらえるようになるか」を地域の高齢者に聞いて回ることになりました。
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ヒアリングを行う前は、「サロンや喫茶店を増やせばよいのではないか」、あるいは「図書館を新設してみてはどうか」といった考えもあったそうですが、多くの方が口にしたのは「自宅のそばで働ける場所(仕事)があれば自然と外出することになる」という意見だったのです。ただ、現役当時と同じように月~金曜日のフルタイムの仕事ではなく、"無理なくマイペースに働けること(週2-3日、短時間)"が強い希望でした。やはり、「朝起きて仕事に向かう」ライフスタイルは現役時代から最も慣れ親しんだものであり、その習慣が望まれたということです。

そこでプロジェクトメンバーは、まちづくり事業としての目的を踏まえながら、「無理なく楽しく働ける」、さらに「地域の課題解決にも貢献できる」ような仕事(=「生きがい就労」と称する)の開拓を目指しました。具体的には、人手不足が顕著な「農業」や「保育」、「生活支援」や「福祉サービス」などの分野で、生きがい就労の場を拡げました。
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この結果、「生きがい就労」という新たな仕事の場を通じて、地域に誰も知り合いがいなかった高齢者同志が必然的につながりあい、仕事が終われば近くの蕎麦屋で一杯飲んで帰る、仕事以外の日でも一緒にカラオケを楽しむなど、日常的な交流も盛んになっていったようです。さらに、生きがい就労に勤しむ高齢者には、「仕事を再び始めてから健康になった」、「毎日にハリが戻った、リズムがよくなった」など、健康面や生活面でのプラスの効果が現れたとのことです。

 この事例は、地域(自治体)が、孤立化する高齢者の「人と人」、「人と地域」の"つながりの再生"を目指した話です。この生きがい就労事業はその後、事業名は変わっていきましたが、現在も継続的に取り組まれています。「就労に再び勤しむこと」は高齢期の新たなつながりを築く一つの方法ですが、全国の各地域でそうした場が拡がっていくことが望まれます。人生100年時代をより豊かなものにしていくための一つの視点として参考になれば幸いです。
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