「生きがい」が認知症予防や老後の健康に役立つ?

「生きがい」が認知症予防や老後の健康に役立つ?

日々の仕事に追われ、プライベートで「生きがい」を見出せずにいる方もいらっしゃるでしょう。ただ、「生きがい」を持っているか、「やりがい」を持って活動できているかは、「老後の健康状態」や「認知症の発症率」に関係している、ということが近年の研究で少しずつ明らかになってきているようです。

生きがいがあると認知症になりにくい?

「生きがい」とは、「生きていてよかったと思えるようなこと」「生きる価値や意味のこと」です。
どんなことに生きがいを持っているかは人によって違います。仕事あるいはプライベートでの人との交流、家族との団らんの時間に生きがいを見出している方もいるでしょうし、特に生きがいを感じていない、必要と思っていないという方もいるかもしれません。

生きがいは心の充実度の問題であって「身体の健康状態」には関係がなさそうにも思えますが、認知症の発症率に関わっている可能性があるという報告があります。

平均80歳の男女900名を対象に「生きがいの有無と認知症のなりやすさ」を調査した海外の研究(2010年)によれば、平均4年間の追跡調査を行ったところ、生きがいがある人はない人と比べ、約2.4倍アルツハイマー型認知症になりにくいことがわかりました。
また同じく、軽度認知障害(認知症の前段階)の発症リスクも約1.5倍低かったという結果が出ています。

生きがいは寿命も左右する?

生きがいは認知症の発症リスクだけでなく、死亡率にも関連していると考えられています。

2016年、アメリカの医学雑誌「Psychosomatic Medicine」に掲載された記事にて、「人生に生きがいを持っている人は、持たない人の約5分の1の死亡率であった」ということが発表されました。
またこのほか2018年の海外の調査でも、「人生に高い目的意識を持っている人は、心血管疾患や死亡のリスクが低く、寿命や健康寿命が長い」という結果が出ているそうです。

生きがいがなぜ死亡率に関係するのか、詳しいことはわかっていませんが、人生を前向きに考えている人は身体の活力や回復力が強まったり、ストレスが低下して精神面で健康をもたらすことから、長生きしやすいのではないかと考えられています。

高齢者が生きがいを持つためにできることは?

若いうちは仕事や子育て、趣味や友人との交流などがきっかけになり、自然と生きがいを持てる機会が得られます。しかし、高齢者は、配偶者や友人との死別、家族との離別などで交流の機会が減るので、「生きがいを持ちにくい環境」にあるといえるでしょう。

内閣府による平成29年の「高齢者の健康に関する調査結果(概要版)」によれば、高齢者は75歳を過ぎた頃から、生きがいを感じていない割合が高くなる傾向にあります。80歳以上は特にこの傾向が顕著です。

では、このような「生きがいを感じていない高齢者」はどのようにして生きがいを見つけていけばいいのでしょうか?

新しい趣味に挑戦する

老後は外出の機会が減るので人との交流が少なくなり、引きこもりがちになりやすいです。外出して活動の機会を増やすことや人との交流で刺激を受けることは、生きがいを見つけるだけでなく、認知症の予防や心身の健康維持にも役立ちます。

楽しんで取り組める趣味活動を見つけることは、「外出したい」というモチベーションになるのでおすすめです。新しい趣味を見つけてもいいですし、昔夢中で遊んでいたもの、やってみたかったことを思い返してチャレンジしてみてもいいでしょう。

人との交流の機会がほしいという方は、自治体が開催している講座や行事も多いので、役所などに行って尋ねてみるのもいいかもしれません。

ボランティア活動に参加する

「人に喜ばれたときに生きがいを感じられる」という方は、ボランティア活動もおすすめです。市役所でもインターネットでも、色々な機関で様々なボランティアは随時募集されていますので、まずは体力や生活にあまり負担がかからないものから始めてみましょう。

シルバー人材センターなどに登録する

「仕事をしていると生きがいを感じられる」という方は、高齢者向けの仕事窓口であるシルバー人材センターや、ハローワークの生涯現役支援窓口を訪ねてみるといいでしょう。仕事が決まれば報酬をもらえる上に、身体の活動にもつながるので、健康を維持できて一石二鳥です。

おわりに:健康的な老後生活を送るためには「生きがい」も不可欠

認知症予防や健康維持のためには、食事や運動などの生活習慣を見直すことが重要ですが、「生きがい」を感じられる時間を作ることも同様に大切です。ご自身の健康のためにも、毎日楽しく過ごすためにも、自分だけの生きがいをゆっくり見つけていきましょう。


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