【長生き応援シリーズ⑯】人生100年時代の"働き方・活躍の仕方"

【長生き応援シリーズ⑯】人生100年時代の"働き方・活躍の仕方"

"人生100年時代"と言われている現代、一人ひとりが安心して・自分らしく、より豊かに過ごすためには、誰もが関わる可能性のある認知症について正しい知識をもつとともに、明るく前向きに過ごすためのヒントを得ることが必要です。
今回は、人生100年時代にふさわしい理想の働き方・活躍の仕方について考えてみます。

人生100年時代の働き方・活躍の仕方~「生計就労~生きがい就労」の実現

人生100年時代、年齢に関わらず自分らしく社会の中で"活躍"し続けることは、健康や生きがいにもつながる大切なことです。特に「就労」という形で活躍し続けることは、高齢期の経済基盤を支えていくことにもなります。こうした話は、各種メディアの報道からも昨今よく見聞きされていることかもしれません。ただ、いざ自分が高齢期に活躍し続ける、働き続けることに対して、どのような考えやイメージをもたれているでしょうか。※この話の前提としては、「定年」がある仕事をされている人を念頭においています。あらかじめご了承ください。

「それまで十分勤め上げたのだから、あとはゆっくりできることが望ましい」、「いわゆる高齢者になったのだから引退はやむを得ない」など、引退することを歓迎、あるいは必然のこととして受け入れる考えもあるかと思います。ここは経済環境の違いも含めて、考え方も人それぞれだと思いますが、一つ明らかなことは、人生100年時代に照らせば、60歳あるいは65歳で引退した後、「30年、40年という人生がまだ残っている」ということです。人生の長さに照らせば、60歳あるいは65歳での引退は明らかに"早すぎる"と思います。「定年=引退」という人生のイベントはあくまで「通過点」と考えることが自然ではないでしょうか。

「【長生き応援シリーズ③】「若返る高齢者~高齢者のイメージを捉え直そう」の中でもお伝えしたように、今の高齢者は若返っています。その下の年代の人たちもおそらく同様です。日本老年学会等が提唱しているように65~74歳まではいわゆる高齢者ではなく「准高齢者」として扱うことが社会的にも相応しいでしょう。個人差のある話でありますが、一つの目途として74歳までは体力的にも十分活躍し続けられる、少なくともそれまで様々な活躍の可能性があると考えることが大事です。"もう歳だから"ということを口にする人は少なくありませんが、その時期は少なくとも75歳を過ぎてからにすべきでしょう。

そうした考えの中、人生100年時代に相応しい働き方は、次のようなパターンが一つの理想ではないかと考えます。それは、「65歳までは生計のための就労(=生計就労)に勤め、その後は"85歳くらい"まで生きがいのための就労(=生きがい就労)に従事する」というものです。75歳では足らず、85歳までを1つの目安と考えています。

ここで理解いただきたいことは、65歳からの生きがい就労は、現役当初と同じような働き方ではなく、週2-3日、1日2-3時間くらいの軽度な仕事です。「【長生き応援シリーズ⑫】地域が創る新たな高齢者のつながり」の中でもご紹介したように、高齢者の多くは、現役当初と同じような月曜日から金曜日までフルタイムで働くことを望んでいません。自分の体力やペースに合わせて働けることを望む人が多いのが実態です。「仕事=苦役」と考える人も少なくないかもしれませんが、それくらいの負荷で自分のペースで高齢期も働けることはむしろ恵まれた環境ではないでしょうか。

このように「生計就労」から、働く量をダウンサイジングした「生きがい就労」に移りながら、例えば一つの目標として、85歳くらいまで活躍できる人生ができたら、それは素晴らしいことではないでしょうか。経済的な支えという視点からも有益なことです。

また、そうした働き方は選択肢(可能性)も非常に多く魅力的です。雇用されて働くパターン(継続雇用、再雇用、再就職)から、自ら「起業」する、NPOなど地域貢献型の活動をする、協同労働やボランティアという活躍の仕方まで様々あります。65歳からもこうした様々な働き方、活躍の仕方がある、自分のキャリア・人生を拡げられる可能性があることをぜひ認識いただきたいと思います。
図表1:人生100年時代の理想の働き方イメージ
 (1116)

高齢者の活躍の場を拡げる「生涯現役促進地域連携事業」の展開

とはいえ、そうしたリタイアした後も活躍できる"場"がなければ、生きがい就労など"絵に描いた餅"になってしまうでしょう。ところが、そうした場を創ろうとしている事業があるのです。それは、厚生労働省が2016年度から進めている「生涯現役促進地域連携事業」というものです。

この事業は、地方自治体(都道府県/市区町村)が中心となって、まず所定の「地域高年齢者就業機会確保計画」を策定し、そのうえで地域の関係機関(自治体をはじめ高齢者の就業などに関係する機関)で組織する「協議会」等 が、高齢者の活躍場所を拡げるための様々な活動を行っていくものです。特に、地域が抱える課題の解決に高齢者の力を活かしていくことを志向している点が特徴です。

2016年4月に創設されてから4年が経過した現在(2020年8月)、全国で75の地域(都道府県28、市区町村47)で進められています。なお、当事業は厚生労働省からの公募(継続的に実施される)に対して、都道府県及び市区町村が名乗りをあげて採択された場合に実施できる事業です。現時点で全ての地域で行われているものではありませんが、今後もこの事業は全国各地に拡がっていきます。皆様のセカンドキャリアの実現にも関係しますので、ぜひ注目していただきたいと思います。

 このように、人生100年時代、年齢に関わらず活躍できる社会の実現に向けて、社会の側も変わりつつあります。高齢期に働くことへの考えは人それぞれとは思いますが、大事なことは、何歳になっても社会とつながりあっていることではないでしょうか。人生100年、いつまでも「活躍」し続ける人生をぜひ歩んでいただきたいと思います。

生20-2905,商品開発G

関連記事

  • 微小血管(びしょうけっかん)狭心症の特徴と治療

    微小血管(びしょうけっかん)狭心症の特徴と治療

    微小血管(びしょうけっかん)狭心症とは、心臓弁膜症等の疾患が認められず、直径100μm(マイクロメートル)以下の微小な冠動脈(かんどうみゃく)が充分に拡張しなかったり、著しく収縮したりすることで起こる狭心症です。この記事では、微小血管狭心症の特徴と治療について解説します。

  • 糖尿病が引き起こす皮膚トラブルについて

    糖尿病が引き起こす皮膚トラブルについて

    糖尿病の方は皮膚トラブルが起こりやすく、皮膚トラブルが悪化すると壊疽(えそ:皮膚・皮下組織等が壊死し、黒く変色した状態)等に進行し、日常生活に支障を来す可能性があります。この記事では、糖尿病が引き起こす皮膚トラブルについて解説します。

  • 直腸がんの症状と予防対策

    直腸がんの症状と予防対策

    直腸は大腸の一部であり、15cmから20cm程度の長さがあります。上部から直腸S状部・上部直腸・下部直腸に分けられ、上部でS状結腸からつながり下部で肛門へとつながります。この記事では、直腸がんの症状と予防対策について解説します。