認知症の治療内容と治療で目指すべき目的とは?

認知症の治療内容と治療で目指すべき目的とは?

超高齢社会の日本では、認知症を発症する高齢者の数も増加傾向にあります。もし認知症を発症した場合は、どのような治療が行われるのでしょうか。また、治療はどのような目的で行われるのでしょうか。
前向きに治療を続けていくため、治療の不安を解消するためにぜひ参考にしてください。

認知症の治療法は、認知症の種類によって異なる

認知症の治療法や治療方針は、認知症の種類によって異なります。まずは認知症のほとんどを占める「三大認知症」について見ていきましょう。

・アルツハイマー型認知症
日本人の認知症の約半数はアルツハイマー型認知症といわれています。海馬(記憶力や空間認識能力を司る部位)に老人斑などが出現して脳の神経細胞が死滅していき、物忘れや物盗られ妄想、ひとり歩きなどの症状が現れます。

・脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血などが原因で脳の血液循環が悪くなり、脳の一部が壊死します。物忘れや手足のしびれ、麻痺、感情のコントロールがうまくいかないといった症状が現れます。

・レビー小体型認知症
「レビー小体」という特殊な円形物質ができることで、脳の神経細胞が死滅していきます。注意力の低下や妄想、認知機能障がい、抑うつ症状、睡眠時の異常言動、手足の震えなどのパーキンソン症状が特徴的です。

認知症の治療内容とは?

認知症の治療法は薬を使った「薬物療法」とリハビリや生活指導などの「非薬物療法」に分けられます。

■ 薬物療法
薬物療法は、認知機能を高めて認知症の進行を遅らせる薬や行動・心理症状を抑える薬を使って認知症の症状を抑えていきます。
なお、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせる薬が、レビー小体型認知症の方にも有効な場合があります。

ただし、現在導入されている薬はあくまで対症療法薬であるため、非薬物療法で治療効果を上げていく必要があります。

■ 非薬物療法
認知症の治療では、認知症の方が今できること、興味を持っていることを活かし、前向きに日常生活を送れるようにサポートすることが欠かせません。

非薬物療法では、薬を使わずに症状の進行を遅らせる取り組みをしていきます。
例えば、書き取りやドリルなどの認知リハビリテーション、昔の出来事を思い出す、ご家族やご友人と交流する、音楽や絵画、陶芸、囲碁、将棋などを楽しむ、ウォーキングなどの軽い運動を続ける、といったものです。

こうした非薬物療法によって、抑うつや睡眠障がい、ご家族への暴力、ひとり歩きなどの周辺症状の改善が期待できます。

現在の認知症の治療の目的は?

認知症を完全に治す治療法はまだありません。認知症の     治療薬も「認知症の症状を緩和する薬」であり、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症そのものを完治させる治療薬はありません。
ただ、対症療法であっても、薬の服用やリハビリ、生活習慣の改善などを実施することで、認知症の進行を遅くし、症状をやわらげることは可能と考えられています。

認知症の進行を遅らせ、症状をやわらげることで、認知症になった方自身の辛さをやわらげることができますし、ご家族や周囲の方の困りごとの解決や心身の負担の軽減にもつながります。

認知症は完治できなくても、適切な治療を受けることでご本人とご家族の生活の質を高め、幸せに過ごす時間をより長くすることは目指せるでしょう。

おわりに:認知症の治療の目的はご本人とご家族の生活の質を上げること

認知症を完治させる治療法は確立されていませんが、軽度の段階で発見できれば、対症療法で症状の進行を遅らせたり、症状を緩和することができます。認知症の症状を緩和することはご本人だけでなくご家族の負担を減らすことに役立ちますし、進行を遅らせることで一緒に過ごす時間を増やすことができます。

認知症の治療は早期発見がカギになるので、ご家族や周囲の方が早めに気づいてあげられるように気を配ってあげましょう。
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