高齢者が有酸素運動するメリットとウォーキングするときの注意点

高齢者が有酸素運動するメリットとウォーキングするときの注意点

「年をとっても適度な運動を続けることが大事」「ウォーキングの習慣をつけよう」とよくいわれますが、なぜ高齢者はウォーキングなどの有酸素運動をしたほうがいいのでしょうか?
有酸素運動が健康にもたらす効果や、高齢者がウォーキングする時に気をつけることをお伝えしていきます。

ウォーキングが高齢者向けの有酸素運動におすすめの理由

手軽に取り入れられる有酸素運動として、高齢者の方におすすめなのが「ウォーキング」です。

ウォーキングは肥満解消、生活習慣病予防に役立ちますが、高齢者が実践することで、さらに下記のような効果が期待できると考えられています。

・体力や持久力、バランス機能の向上(転倒やケガの防止)
・ロコモティブシンドローム(筋肉などの衰えが原因で、 立つ・歩くといった機能が低下している状態)の予防・改善
・サルコペニア(加齢や疾患に伴う筋力の減少)の予防・改善
・認知症予防

いずれも高齢者が健康的な生活を送る上で、とても大切なことです。

ウォーキングを継続的に続けることで記憶や学習機能を司る脳の海馬の神経が増え、思考力・学習力に関わる前頭葉、記憶力に関わる側頭葉の働きが活性化すると考えられています。
ウォーキングはそれほど負荷も高くないので、高齢者にはとくにおすすめといえるでしょう。

高齢者がウォーキングするときの注意点

予防したい病気によって目標歩数は異なりますが、寝たきりや認知症、動脈硬化、骨折、生活習慣病全般を予防したい場合は、1日8,000歩、20分以上歩くことが目標になります(細切れに分けても構いません)。
「ややきつい」と感じる中強度の速度で歩くことを心がけましょう。

また、ウォーキングで重要なのがフォームです。正しい歩き方ができないと、健康効果が得られなかったり、体の一部に負担がかかったりします。歩く時は以下のことを心がけ、フォームを意識しましょう。

膝を伸ばして骨盤を真っ直ぐに、やや前傾姿勢で立つ

まずは歩き出す前のフォームを確認しましょう。
膝が曲がっていると骨盤が後ろに傾き、猫背の姿勢になりやすいので、腰を軽く曲げ、太ももの前側を触ってポヨンと緩んでいるか確認してください。ここの筋肉が緩んでいれば、骨盤が立っていることが確認できます。

太ももが硬くないことを確認したらそのまま腰を伸ばし、重心を少し前に置いて、前傾気味に立ちましょう。

みぞおちから脚を降り出すように歩く

全身を使ってウォーキングをするには、脚の振り出し方も重要です。脚の付け根がみぞおちにあるとイメージして、太ももの内側を擦るように歩いてみましょう。内ももとお尻の筋肉をしっかり動かすことができます。

歩幅は少し大股で

無理のない範囲で大股になるように足を踏み出してください。内ももやもも裏の筋肉が硬いうちは難しいかと思いますが、少しずつ大股のフォームを意識すると筋肉の柔軟性の向上が期待できます。

かかとからつま先へ足裏を転がすように

かかとで着地してから再度蹴り出すとき、足裏の重心の移動は、かかとからつま先へ転がすようなイメージで行ってください。

肘を曲げ、十分後ろに引く

肘を後ろに引くことで背中側の筋肉を使うことができ、猫背の予防ができます。また、肩甲骨が動いて骨盤が動きやすくなることで、脚を大きく使えるようにもなります。

高齢者には「水中ウォーキング」もおすすめ

水中ウォーキングは運動強度が高く、水圧や水の抵抗によって陸上とは異なる運動負荷がかかるため、効率よく筋力や心肺機能を高められます。また、水中では浮力が生じるため、膝や腰などの関節に負担がかかりにくいことも、高齢者にとってメリットになるでしょう。

高齢者が水中ウォーキングするときの注意点

水中ウォーキングは、陸上のウォーキングよりもかなりカロリーを消費するので、いきなり長時間取り組まないようにしましょう。初めのうちは、20〜30分歩いたら休憩を挟むようにしてください。体力によりますが、運動時間は30分〜1時間くらいを目安にしましょう。

水中ウォーキングをする際は、さらに以下のことを心がけてください。

歩幅は小さめに

歩幅が大きくなるとその分水の抵抗が増すため、運動量も増加します。最初のうちは小さな歩幅から始め、慣れてきたら少しずつ大股で歩くように調整しましょう。太ももを高く上げることで、下半身の筋力向上が期待できます。

腕を大きめに振りながらウォーキング

水中ウォーキングの際は、腕を大きく左右・前後に動かした方が水の抵抗を大きく受けます。肩周りの三角筋などの筋肉に負荷がかかり、肩や腕の筋トレにもなるので、体力と相談しながら腕の振り方も調整してみてください。

おわりに:有酸素運動を習慣づけて、老後をより健康に過ごせるようにしよう

有酸素運動は、高齢者の身体機能や脳の機能維持・向上のためにぜひ取り入れたい習慣です。筋力や体力の衰えを感じてきた高齢者の方は、寝たきりや認知症を防ぐためにもウォーキングや水中ウォーキングなどにトライしてみてください。なお、心臓病や高血圧などの持病のある方は、必ずかかりつけ医に相談してから運動を始めましょう。


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