高齢者をうまく歩行介助するコツとは?

高齢者をうまく歩行介助するコツとは?

加齢に伴い足腰の筋力が弱くなってくるのは当然のことです。高齢者が歩くときに、ご家族が介助で手を貸すことも増えてくるかと思います。今回は、歩行時にふらつきのある高齢者の方への歩行介助のコツをお伝えしていきますので、参考になさってください。

歩行介助のコツ:①動きを妨げない

歩行介助をするときに、体の全てを支えるつもりで力んでしまうと、かえって歩行の邪魔になってしまうことがあります。これは、人間は二足歩行をするときに「あらゆる関節や筋肉を連動させる」ことでバランスを保っているからです。

真っ直ぐ立っているときの重心は体の中心にありますが、歩行時には骨盤が動いて重心が左右・前後に移動します。うまく歩行するための肝になるのが「重心移動」です。

「転倒が心配だから」という気持ちで相手に密着しすぎたり、腕を掴んだりしすぎると、重心移動のバランスがとれずに歩きづらくなってしまいます。自然な手足の振りを妨げないように注意しましょう。 離れすぎず、歩く動きを妨げない範囲で、体の近くに寄り添う距離感を心がけてください。

歩行介助のコツ:②要介護者の「斜め後ろ」に立つ

歩行介助は、適切なポジション取りも重要になってきます。基本の立ち位置は「要介護者の斜め後ろ」です。本人の視界に入らない場所、歩行の動きの妨げにならない場所に立つようにしましょう。

また、要介護者が右利きなら左側に、左利きなら右側に立つのが原則です。麻痺がある方であれば麻痺のある側に、杖を使っている方であれば杖のない側に立つようにしましょう。

この際、寄り添う形で相手の脇に腕を差し込み、手を握ってあげてください(差し込んだ手や腕で要介護者の腕を掴まないように注意)。こうすればお互い前方を向けるため、長い距離も移動しやすくなります。

歩行介助のコツ:③要介護者の歩行ペースに合わせる

歩行介助時に要介護者を無理に引っ張ると、転倒を招く恐れがあります。できるだけ本人のペースに合わせることが大切です。

要介護者の歩行の動きやクセを見て、右に重心が動いたら自分も右に、左に重心が動いたら自分も左に…というように足の動きや歩幅、リズムを合わせてあげてください。足腰が弱ってうまく前進できない方を介助するときには、重心のあるほうの足に体重を乗せるようにして支えると、次の一歩がスムーズに踏み出せるようになります。

歩行介助のコツ:④両手を取って歩く際は「向き合うように」

介助者と要介護者が両手を取って歩く「手引き介助」をするときには、要介護者と向き合うように立ち、肘を軽く持ち上げてあげるのがポイントです。同様に、要介護者にも介助者の肘を持ってもらってください。相手の歩行ペースに合わせながら、介助者は後ろ向きで歩きましょう。

この歩行介助方法は両手をつないだ状態なので、前後への転倒を回避しやすいですが、後ろ向きで歩く介助者が転倒すると二人とも大怪我をする恐れがあります。進行方向の障害物には十分注意しましょう。

歩行介助のコツ:⑤階段の昇降時は「健康なほうの足」に重心をかける

階段を昇り降りするときの歩行介助のコツは、要介護者の「健康なほうの足(麻痺などがない)」に重心をかけることです。

杖を利用している高齢者の場合、昇るときは「杖→健康なほうの足→麻痺などがあるほうの足」、 降りるときは「杖→麻痺などがあるほうの足→健康なほうの足」の順番で動かしてもらうようにすると、スムーズに昇降できます。

また、杖を使わない高齢者の場合は、必ず片手で手すりを掴んでもらいながら健康なほうの足に重心をかけてもらうようにしてください。なお、階段を昇るときは、介助者は要介護者の斜め後ろ、降りるときは斜め前に立って、万が一バランスを崩した際に支えられるようにしましょう。

おわりに:正しい歩行介助で要介護側と介護側の両方の安全を守ろう

足腰の弱った高齢者の歩行介助をするとき、間違った介助をしてしまうとかえって本人が歩きづらくなったり、転倒を招いたりすることがあります。二人同時に転倒してしまうと、介護される側はもちろん、介護する側もケガをしてしまうことになりかねません。歩行介助の適切なポジションやペース、動作を事前にチェックしておきましょう。

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