認知症と高齢者のうつ病にはどのような違いがあるの?

認知症と高齢者のうつ病にはどのような違いがあるの?

高齢者に「できていたことができなくなった」「一日中ぼーっとしている」といった様子が見られたとき「認知症かも?」と心配になるご家族は少なくないでしょう。しかし、このような変化は「うつ病」が原因の可能性もあります。今回は、「認知症」と「高齢者のうつ病」の違いについてお伝えしていきます。

認知症と高齢者のうつ病は症状が似ていても原因が違う

認知症とは「脳に何らかの問題が起こる」ことで発症し、記憶力や判断力が低下します。一方で、うつ病は「抑うつ状態が長く続く」ことが原因で、日常生活の行動ができなくなる、無気力になるなどの症状が現れるようになります。

いずれも「これまでできていたことができない」「ぼーっとしている」「性格が変わった」などの変化が現れるので、高齢者にこのような症状が見られると認知症を疑うのも当然かもしれません。しかし、認知症とうつ病では原因が違うため治療方法や対処方法も変わってきますし、ときには認知症とうつ病を併発している場合もあります。見極めがとても大切になってくるのです。

認知症と高齢者のうつ病の違いは?

認知症と高齢者のうつ病の発症の仕方や現れる症状は、以下のような違いがあります。

■認知症の特徴
認知症の主な症状は、物忘れや記憶障がいです。自分でも気づかないうちに発症し始め、数年間かけてゆっくりと症状が進行していきます。

認知症で見られる物忘れの特徴は「実際に起きた出来事自体を忘れる(例:朝食のメニューではなく、食べたこと自体を覚えていない)」という点です。何度も同じことを尋ねて「さっき言ったでしょ」と周囲に注意されても、本人は「尋ねたという行為自体の記憶」が抜け落ちてしまっているので、注意されたことに心当たりがなく、戸惑いやいらだちを覚えることもあります。

また、お金(物)を盗まれたと思い込む「物盗られ妄想」や、知らない誰かが家の中に入ってきたという「侵入妄想」が見られる場合があります。

■高齢者のうつ病の特徴
うつ病は、発症前に何らかのきっかけ(配偶者との離別などの大きなストレス)がある場合が多いです。そのきっかけを境に、睡眠障がいや食欲低下、頭痛や吐き気などの体調不良を訴え始め、好きなことにも興味を示さなくなり、自宅に引きこもりがちになる、といった変化も出るようになります。

集中力が低下することで物事をうまく覚えられなくなる症状が見られることもありますが、認知症患者は覚えられなくなっていること自体を否定するのに対し、うつ病患者は覚えられなくなったことに自覚があり、そのことに悩んで自己否定に陥りがちです。

また、うつ病では、そこまで深刻ではない体調不良を重病と思い込む「心気妄想」や、実際には十分な余裕があるのにお金がなくなって生活ができなくなると過剰に心配してしまう「貧困妄想」が現れる場合もあります。

認知症と高齢者のうつ病を見分ける方法はある?

認知症とうつ病の症状には上記のような違いがありますが、実際には両者を併発していることもあるため、一般の人が見分けるのは難しいです。また、内科系の病気や脳の病気によって認知症やうつ病のような症状が出ている可能性もあるので、医療機関で詳しい検査を行う必要があります。

認知症やうつ病が疑われる症状が見られたら、まずは認知症の専門外来や物忘れ外来などを受診しましょう。病院によって検査の方法に違いはありますが、一般的には以下のような流れで診察・検査が行われることが多いです。

■問診
最近の出来事などの記憶について簡単な質問をしたり、計算をしてもらったりして、認知機能に異常がないか調べます。

■脳画像検査
CT・MRI検査で、認知機能に影響を与えるような脳の異常(脳の萎縮や脳梗塞、脳出血など)の有無を調べます(脳波検査で、脳機能の低下の有無を調べる場合もあります)。

■血液検査
認知機能に影響を与えうる、ホルモンバランスの異常や隠れた内科系の病気がないか調べます。

おわりに:認知症かうつ病か、その他の病気かの鑑別が重要!

高齢者は、配偶者や友人との離別、家族との別居、社会的な孤立など大きなストレスと直面する機会が多い分、うつ病を発症しやすい状況です。「これまでできていたことができない」などの様子が見られると「認知症」と思い込んでしまうご家族もいらっしゃるでしょうが、うつ病やその他の病気が原因で日常生活に支障をきたしている可能性もあります。適切な対処をするためにも、早めに専門外来で検査してもらいましょう。

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