【長生き応援シリーズ⑪】 幸せとつながり

【長生き応援シリーズ⑪】 幸せとつながり

"人生100年時代"と言われている現代、一人ひとりが安心して・自分らしく、より豊かに過ごすためには、誰もが関わる可能性のある認知症について正しい知識をもつとともに、明るく前向きに過ごすためのヒントを得ることが必要です。
今回は、幸せを感じる要素、特に"人とのつながり、社会とのつながり"に注目します。

人間関係は「幸せ」の重要な要素

いつまでも幸せを感じながら年を重ねていきたいものです。漠然とそう思っても、実際どのようなことを意識していくことが必要なのでしょうか。幸せを感じる理由は人それぞれであって、健康であれば幸せ、お金があれば幸せ、やりがいのある仕事ができれば幸せ、理解のあるパートナーがいれば幸せなど、様々な理由が挙げられると思います。

正解はその人の中にあるわけですが、多くの人に尋ねてその傾向を調べた数多くの調査結果をみると、例えば前述した「健康」「お金」「仕事」「人との関係」の4つの要素では、「人との関係」が最も「幸福感」にとって重要であるようです。これは幸せを科学的に追究する研究に造詣の深い大石繁宏氏が、世界で蓄積された研究成果をレビューして明らかにした見解です。分析結果としてよく用いられる「相関係数(関係性の強さを示す)」を用いて、これらの要素間の相関度合いを比較すると、「人との関係」が最も高かったのです。つまり、健康やお金や仕事のことよりも、例えば「理想のパートナーがいる」、「いざという時に頼れる人がいる」人ほど幸福感が高い傾向にあるようです(1)。 

また、「人との関係」ではもう一つ興味深い研究結果があります。それは「東洋」と「西洋」の文化圏の違いにより幸福像の違いがあるかを研究したものです。日米で比較研究を行った結果、幸せに寄与する強さとして、米国は対人関係よりも「自己の充足感(したいことが叶うなど)」が重要視される一方、日本は「人との関係性」が重要視されているということでした(2)

日本ではよく他者の目を気にしがち(同時に不安になりがち)ということを外国の方から耳にすることがありますが、確かに喜怒哀楽の多くが「他者」との関係の中で起こっている人が多いのではないでしょうか。この結果の違いは、人口密度の違いや、他者と協調を重んじる歴史的文化的な価値観がもたらしているのかもしれません。

いずれにしても、「人との関係」は、特に日本において「幸せ」に大きな影響を与えると考えられるだけに、家族や職場、あるいは地域(近所)の人との関係性を円満に築いていくことが、自分の幸せを高めるためにも重要なことだと思います。

社会とのつながりは「長生き」にも貢献

高齢者にとって、社会とのつながりを維持することが「長生き」にもつながる可能性を示した研究成果もあります。かねてから「社会とのつながりが豊かな人ほど長生きする傾向があること」は指摘されていますが、例えば、社会とのつながりに焦点を当てて、65歳以上の人801人を1998年から2005年にかけて追跡調査した結果をみると、社会とのつながりを有する人ほど7年後の死亡率が低い傾向にあることがわかっています。

具体的には、「家族以外との会話」、「地域活動等への参加(=活動参加)」、「仕事や家事の役割(=役割の遂行)」、「近所付き合い」がある人とほとんどない人で比べると、ある人のほうが長生きしているという結果です。
<社会とのつながりの有無と7年後死亡率>
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出典:安梅勅江・篠原亮次・杉澤悠圭・伊藤澄雄「高齢者の社会関連性と生命予後 社会関連性指標と7年間の死亡率の関係」(平成18年9月15日・『日本公衆衛生雑誌』第53巻9号)より
人とのつながり、社会とのつながりが重要であることは、改めて述べるまでもないことだったかもしれません。ただ、こうして「幸せ」との関係だったり、「長生き」にもつながる可能性を確認することで、改めて"つながり"の重要性を再認できたのではないかと思います。人生100年時代を生きていく上で、誰とつながりあっていくか、また社会とどのようにつながっていくか、高齢期も視野に入れて考えていただければ幸いです。

出典
(1)大石繁宏「幸せを科学することは可能か」(岩波書店「科学」Vol.80、2010年3月)より
(2)北山忍「洋の東西で幸福感にどのような違いがあるか」(岩波書店「科学」Vol.80、2010年3月)より
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