高齢者に多い「不眠症」…原因と対策は?

高齢者に多い「不眠症」…原因と対策は?

近年、不眠症や睡眠障がいに悩まされる人は増加傾向にありますが、特に多いのは高齢者の不眠症です。「年をとると睡眠時間が短くなる」とはよくいわれますが、なぜ高齢者になると睡眠のトラブルを抱えやすいのでしょうか?原因と対策をお伝えしていきます。

高齢者の不眠症の原因は?

年をとると体力が低下したり、老眼になるのと同じように、睡眠にも変化が生じます。具体的な症状としては、「眠りが浅く、夜中何度も目が覚める(中途覚醒)」「朝早く目が覚める(早朝覚醒)」「睡眠時間が短い」「寝つきが悪い(入眠障がい)」が挙げられます。

こうした高齢者の不眠症や睡眠障がいの主な原因は、下記の通りです。

日中の活動量の少なさ

定年退職をした高齢者の多くは、働き盛りの世代のように通勤や活動、外出をする機会が減るため、活動量が少ない分、必要な睡眠量も少なくなります。

加齢による体内時計の変化

私たち人間には、ほぼ1日周期でリズムを刻む「体内時計」が備わっています。この体内時計の働きによって、昼間は心身が活動モードになり、夜は休息モードに切り替わって自然な眠りに導かれます。

体内時計は毎日1時間ほどズレますが、朝起きて日光を浴びたり、体を動かしたりすることで調整されます。しかし、高齢者は体内時計が前倒しになることで、かなり早朝に目覚めてしまったり、眠りが浅くなる傾向があります。
これには、加齢に伴う「メラトニン」の分泌量の減少が関連しています。

メラトニンは、脳の松果体から分泌されるホルモンで、体内時計に作用して自然な眠りを誘う作用があります。
このメラトニンの働きによって私たちは夜に眠くなるのですが、高齢者はメラトニンの分泌量が少なくなっていることが多く、その影響から高齢者は睡眠・覚醒のリズムが乱れやすくなり、不眠症や睡眠障がいを引き起こしやすくなると考えられます。

加齢による睡眠の質の低下

基本的に、睡眠中は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が一定の周期で繰り返されます。

・レム睡眠:体の力は抜けているが、脳は活動している状態の浅い眠り
・ノンレム睡眠:体と脳の活動が低下している状態の深い眠り

ノンレム睡眠には3段階あり、入眠直後から時間をかけて、第1→第2→第3段階へと深い眠りに移行していきます。この第3段階が熟睡状態なのですが、高齢者は第3段階のノンレム睡眠が減り、70歳以上ではほぼなくなる傾向にあります。
これは、老化に伴い睡眠の質が変化し、眠りが浅く、途切れやすくなるからです。

高齢者の不眠症、睡眠障がいの対策

年をとると早寝・早起きになり、若い頃ほど睡眠をとれなくなるものなので、過度に心配する必要はありません。ただ、眠れないことで日常生活に支障が出ている場合は、対策として以下のポイントを心がけるといいでしょう。

寝床で長時間過ごさない

「やることがないから寝床に入る」習慣があるなら、それが不眠症の原因かもしれません。寝床でうとうとする時間が増えると、睡眠の満足度は低下し、寝つきの悪化や中途覚醒につながります。

日中はしっかり活動する

加齢に伴う体内時計のズレの対策として、「朝に光を浴びて、昼間はしっかり活動する」ようにしましょう。朝~昼は外で運動を太陽の光を十分に浴びているような「アクティブな生活を送っている高齢者」は、睡眠障がいになりにくいと言われています。

ただし、極端な早朝覚醒でお悩みの高齢者の方には、早朝の散歩はおすすめできません。朝早くから光を浴びると体内時計はさらに前倒しになり、ますます早く目が覚めるようになってしまいます。

体内時計のリセットには、朝と夜の光量のバランスが重要です。超早朝型でお困りの方は、夕方以降に散歩をし、夜の光を浴びるようにしましょう。

起床・就寝時刻は一定に

寝不足の日であっても、起きる時間や眠りにつく時間は毎日なるべく同じにしましょう。規則正しい生活習慣を送ることが、体内時計のズレや不眠症の対策には欠かせません。

ただし、眠くないときに無理に眠ろうとするとストレスで神経が高ぶり、眠気が遠のく可能性があるのでおすすめしません。

おわりに:加齢に伴う不眠症があるなら、日々の生活習慣を見直してみよう!

若い頃よりも眠れなくなると、不安を感じる高齢者もいらっしゃるでしょう。睡眠量の減少は、加齢に伴う自然な変化であることが大半です。ただし、日々の生活習慣に不眠の原因が隠れていることもあります。
気になっている方は、生活習慣を見直すことをおすすめします。日中はしっかり体を動かし、メリハリのある生活を送りましょう。


生20-740,商品開発G

関連記事

  • 脳出血治療の予後について

    脳出血治療の予後について

    脳出血は、予後が厳しい疾患のひとつと言われています。この記事では、脳出血治療の予後について解説します。

  • 脳梗塞による麻痺(まひ)のリハビリテーション

    脳梗塞による麻痺(まひ)のリハビリテーション

    脳梗塞で麻痺を起こすと、寝たきりになることでうつ症状・認知症等を発症する可能性があります。この記事では、脳梗塞による麻痺(まひ)のリハビリテーション(リハビリ)について解説します。

  • 転移性肝がんについて

    転移性肝がんについて

    肝がん【肝臓に発生するがん】には、原発性肝がん【肝臓の細胞が悪性腫瘍(がん)化して生じるがん】と転移性肝がん【他部位・他臓器で発生したがん細胞が肝臓に転移し発生するがん】があり、転移性肝がんは原発性肝がんよりも発症数が多いと言われています。この記事では、転移性肝がんについて解説します。