"人生100年時代"と言われている現代、一人ひとりが安心して・自分らしく、より豊かに過ごすためには、誰もが関わる可能性のある認知症について正しい知識をもつとともに、明るく前向きに過ごすためのヒントを得ることが必要です。
今回は、人生100年時代におけるサクセスフル・エイジング、理想の生き方・老い方とは何か、ということについて考えてみます。
今回は、人生100年時代におけるサクセスフル・エイジング、理想の生き方・老い方とは何か、ということについて考えてみます。
長寿時代に相応しいサクセスフル・エイジングとは
「理想の生き方、老い方は」と聞かれて、あなたはどのように答えるでしょうか。「よくわからない、考えたことがない」、「自然体でよいのではないか」など、その答えは人それぞれだと思います。決して何か一つの正解があるわけでもありません。
ただ、この問いに対してジェロントロジー(高齢社会総合研究学)は、「サクセスフル・エイジング(Successful Aging;幸福な老い)」の研究分野において、理想のあり方を追究してきました。いくつか代表的な理論をご紹介すると、1960年代当初、初めて提唱された理論は『①離脱理論(Disengagement theory; Cumming and Henry,1961等)』です。これは「高齢期になったら田舎で静かに暮らすことが理想の老い方」と考えるものでした。次に提唱されたのが、『②活動理論(Activity theory; Havighurst et al,1968等 )』です。これは離脱理論を否定する形で、「年齢に関わらず活躍し続けることが理想の老い方」と考えるものでした。そして、最後に登場したのが『③継続理論(Continuity theory;Atchley,1987等)』です。これは「中年期までに築いてきたライフスタイルなどをいつまでも継続できることが理想の老い方」と考えるものでした。このようにサクセスフル・エイジングのあり方は時代とともに変化してきたのです。
それでは、人生100年時代を迎えた今の日本にとって、理想のサクセスフル・エイジングをどのように考えればよいでしょうか。前述の理論はそれぞれ一つの理論として確立しつつも、いずれも20世紀後半に欧米の研究者が築いたもので、既に30年以上の月日が流れています。人生100年時代を迎えた日本は、改めてこの人生の長さにあった新たな生き方、老い方の理想を考えていくことが求められていると言えます。
ただ、この問いに対してジェロントロジー(高齢社会総合研究学)は、「サクセスフル・エイジング(Successful Aging;幸福な老い)」の研究分野において、理想のあり方を追究してきました。いくつか代表的な理論をご紹介すると、1960年代当初、初めて提唱された理論は『①離脱理論(Disengagement theory; Cumming and Henry,1961等)』です。これは「高齢期になったら田舎で静かに暮らすことが理想の老い方」と考えるものでした。次に提唱されたのが、『②活動理論(Activity theory; Havighurst et al,1968等 )』です。これは離脱理論を否定する形で、「年齢に関わらず活躍し続けることが理想の老い方」と考えるものでした。そして、最後に登場したのが『③継続理論(Continuity theory;Atchley,1987等)』です。これは「中年期までに築いてきたライフスタイルなどをいつまでも継続できることが理想の老い方」と考えるものでした。このようにサクセスフル・エイジングのあり方は時代とともに変化してきたのです。
それでは、人生100年時代を迎えた今の日本にとって、理想のサクセスフル・エイジングをどのように考えればよいでしょうか。前述の理論はそれぞれ一つの理論として確立しつつも、いずれも20世紀後半に欧米の研究者が築いたもので、既に30年以上の月日が流れています。人生100年時代を迎えた日本は、改めてこの人生の長さにあった新たな生き方、老い方の理想を考えていくことが求められていると言えます。
高齢期に訪れる3つのステージを"より良く"生きること
そこで、ジェロントロジーにおける最新の一つの考え方をご紹介したいと思います。それは、「高齢期に訪れる3つのステージをそれぞれ"より良く"生きていけることが理想の生き方、老い方」と考えるものです。
人生100年時代の高齢期は、実に30年超に及ぶ長い期間があります。その間、健康状態や社会との関係なども、年齢とともに変化していきます。同時に、生活課題やニーズも変わっていきます。次のグラフは、「【長生き応援シリーズ⑦】年を重ねると『健康状態』はどのように変化するのか?」の中で紹介した「加齢に伴う生活の自立度の変化」を明らかにしたグラフを加工したものです。
男性の約7割、女性の約9割の方は、70代半ばまでは中年期と変わらず高い自立度を保ち(⇒ステージⅠ)、70代半ばから加齢とともに緩やかに自立度を下げていき(⇒ステージⅡ)、そして最終的に本格的な医療やケアを受けながら暮らしていきます(⇒ステージⅢ)。多くの人がこのように3つのステージを移行しながら長い高齢期を過ごしていくのが実態です。
人生100年時代の高齢期は、実に30年超に及ぶ長い期間があります。その間、健康状態や社会との関係なども、年齢とともに変化していきます。同時に、生活課題やニーズも変わっていきます。次のグラフは、「【長生き応援シリーズ⑦】年を重ねると『健康状態』はどのように変化するのか?」の中で紹介した「加齢に伴う生活の自立度の変化」を明らかにしたグラフを加工したものです。
男性の約7割、女性の約9割の方は、70代半ばまでは中年期と変わらず高い自立度を保ち(⇒ステージⅠ)、70代半ばから加齢とともに緩やかに自立度を下げていき(⇒ステージⅡ)、そして最終的に本格的な医療やケアを受けながら暮らしていきます(⇒ステージⅢ)。多くの人がこのように3つのステージを移行しながら長い高齢期を過ごしていくのが実態です。
加齢に伴う自立度の変化パターン ~全国高齢者パネル調査(JAHEAD)結果より
各のステージにはそれぞれ特有のニーズがあります。まだまだ元気に活動できるステージⅠでは「社会の中での活躍の継続」を望む声(ニーズ)が少なくありません。地域の状況をみると、現役生活をリタイアした後、新たな活躍場所を求めるものの、「やることがない、行くところがない、会いたい人がいない」と"ない・ない"づくしのために、自宅に閉じこもりがちな生活を送ってしまう人が少なくない現状が確認されます。
緩やかに自立度を下げていくステージⅡでは、暮らしの中でちょっとした不便や困りごとが増えていきます。移動や買物をするのも大変になります。そうした高齢者の方々からは、「家族や他人に面倒を見てもらうのは気が引ける、できる限りいつまでも"自立した"生活を続けたい」という声をよく聞きます。「いつか独りになっても、どんな状態になっても、自立した生活を続けたい」、これがステージⅡの大きなニーズと言えます。
そして、本格的な医療やケアを必要とするステージⅢでは、様々なアンケート結果を通じても、「最期まで住み慣れた地域及び自宅で暮らし続けたい」というニーズが確認されます。
各ステージにおけるニーズは、上記に限ったことではありませんが、人生の後半には3つのステージを認識するなかで、それぞれのステージにおいて自分が求めるニーズを満たしながら生きていくことが、長寿時代のサクセスフル・エイジングになるのではないかと考えられます。
以上、抽象的な表現に止まりますが、今後私たちにとって必要なことは、こうした長寿時代に相応しい生き方・老い方のモデルを明確にすること、そのことを社会に周知していくことだと思います。そして、具体的なモデルを確立するなかで、各ステージにおけるニーズを明確にしつつ、何が社会において欠けているかを同時に明らかにし、その改善策を講じていくこと、これらのことを社会が一体となって取組むことが重要です。こうしたモデルづくりの先に、人生100年時代における安心で豊かな未来が拓けていくと考えます。
緩やかに自立度を下げていくステージⅡでは、暮らしの中でちょっとした不便や困りごとが増えていきます。移動や買物をするのも大変になります。そうした高齢者の方々からは、「家族や他人に面倒を見てもらうのは気が引ける、できる限りいつまでも"自立した"生活を続けたい」という声をよく聞きます。「いつか独りになっても、どんな状態になっても、自立した生活を続けたい」、これがステージⅡの大きなニーズと言えます。
そして、本格的な医療やケアを必要とするステージⅢでは、様々なアンケート結果を通じても、「最期まで住み慣れた地域及び自宅で暮らし続けたい」というニーズが確認されます。
各ステージにおけるニーズは、上記に限ったことではありませんが、人生の後半には3つのステージを認識するなかで、それぞれのステージにおいて自分が求めるニーズを満たしながら生きていくことが、長寿時代のサクセスフル・エイジングになるのではないかと考えられます。
以上、抽象的な表現に止まりますが、今後私たちにとって必要なことは、こうした長寿時代に相応しい生き方・老い方のモデルを明確にすること、そのことを社会に周知していくことだと思います。そして、具体的なモデルを確立するなかで、各ステージにおけるニーズを明確にしつつ、何が社会において欠けているかを同時に明らかにし、その改善策を講じていくこと、これらのことを社会が一体となって取組むことが重要です。こうしたモデルづくりの先に、人生100年時代における安心で豊かな未来が拓けていくと考えます。