認知症を予防するには「運動」が重要といわれる理由は?

認知症を予防するには「運動」が重要といわれる理由は?

超高齢化社会の日本では、2025年、高齢者の約5人に1人が認知症になるといわれています。認知症発症の原因のすべてが解明されたわけではありませんが、日々の運動習慣から認知症の発症率を下げることができることをご存知でしょうか?
こちらでは、運動と認知症予防の関連性についてお伝えしていきます。

運動が認知症予防に役立つのはなぜ?

近年、適度な運動は体と脳神経の機能を改善し、認知症予防に役立つことがわかってきました。

認知症の発症率と運動の関連性を調べた研究は数多く存在しますが、その多くで「高齢者の運動や身体活動は、認知機能の低下や認知症発症予防に効果的」という結果が得られています。

2001年に海外で行われた研究を一例に挙げると、認知症を発症していない高齢者4,615人を5年間追跡調査した結果、「運動量の多いグループ(歩行より強度の高い運動を週3回以上行った)」は「運動量の少ないグループ(歩行以下の運動を週3回以下の頻度でしか行っていない)」より、軽度認知障がいやアルツハイマー型認知症、その他全ての認知症の発症リスクが明らかに低かったそうです。

つまり、運動などで活発に動いている高齢者のほうが、運動不足の高齢者よりも認知症になりにくいといえるでしょう。

では、なぜ運動が脳の認知機能に良い影響を与えるのでしょうか?

それは、運動をすると、脳の神経を成長させるBDNF(脳由来神経栄養因子)というタンパク質が海馬(記憶を司る部分)で多く分泌され、海馬の機能維持や肥大に効果をもたらすからだと考えられています。
体を動かすと、脳から出た指令を神経が介して筋肉が動き、同時に筋肉から出た信号が脳に伝わって脳を活性化する―つまり脳と筋肉は、相互に刺激し合う重要な関係性なのです。

また、脳が正しく働くためには、絶えず十分な血液が流れている必要があります。高齢者やアルツハイマー型認知症患者の脳では、海馬などで脳血流の低下が見られており、この血流を改善するためにも、運動をして体を動かすことが効果的だと考えられています。

認知症の危険因子「生活習慣病」対策としても、運動は効果的

糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、脳血管性認知症の危険因子と考えられています。また、糖尿病患者では2倍、高血圧患者では3倍もアルツハイマー型認知症の発症率が上がることがわかっています。

これらの生活習慣病予防に欠かせないのが食事の見直しと運動の習慣化になりますので、運動をして生活習慣病対策をすることが、結果として認知症予防にもつながることが期待できるのです。

認知症を予防するにはどれくらいの運動が必要?

認知症予防に適した運動は、散歩やウォーキングなどの有酸素運動です。有酸素運動は全身の血流を改善し、脳の細胞を活性化する効果が期待できます。

歩く強度は「息がほとんど弾まない程度」とされています。まずは週に3回以上、1日30分以上歩くことから始めてみましょう。

できたら1日1回以上の実践が望ましいですが、大切なのは運動の習慣を継続することです。「買い物をするとき、近所ではなくちょっと遠い店まで歩く」「バス停を1つ手前で降りて歩く」「エスカレーターやエレベーターを使わず、階段で昇り降りする」といったちょっとした工夫から、歩行習慣を取り入れていくのがいいでしょう。

おわりに:日々の運動習慣で、認知症&生活習慣病を予防しよう

認知症の発症率と日頃の運動習慣には、深い相関性があります。特に生活習慣病を持っている方は認知症の発症リスクが高いので、生活習慣病の改善と認知症予防のためにも、日々の通勤や外出時に階段を使う、一駅分歩くなどして「無理なく継続できる運動習慣」を身につけましょう。


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