【長生き応援シリーズ⑦】 年を重ねると「健康状態」はどのように変化するのか?

【長生き応援シリーズ⑦】 年を重ねると「健康状態」はどのように変化するのか?

"人生100年時代"と言われている現代、一人ひとりが安心して・自分らしく、より豊かに過ごすためには、誰もが関わる可能性のある認知症について正しい知識をもつとともに、明るく前向きに過ごすためのヒントを得ることが必要です。
今回は、人生100年時代を歩んでいくうえで最も基本的なテーマと言える「健康」について、高齢者の実態も見ながら考えていきたいと思います。

高齢者約6,000人を約30年間追跡したデータから

周囲を見渡せば、同じ年齢の高齢者でも元気ハツラツと過ごしている人もいれば、そうでない人もいます。健康状態は人によって異なるものですし、いつ病気になるかなどは現代の医学をもっても確実な予測はできません。ただ、年を重ねると健康状態がどのように変化していくのか、自分はいつまで元気でいられるのか、気になる人は少なくないと思います。そこで一つ参考になる貴重なデータを紹介したいと思います。それは、日本の高齢者約6,000人を1987年から約30年にわたって追跡して、「加齢に伴う生活の自立度の変化」を明らかにした次のデータです。
加齢に伴う自立度の変化パターン~全国高齢者パネル調査(JAHEAD)結果より
①男性
 (929)

②女性
 (932)

資料:東京大学高齢社会総合研究機構編「東大がつくった高齢社会の教科書」(東京大学出版会、2017年3月)、p34より引用し作成
データの見方ですが、横軸は年齢、縦軸は生活の自立度の高さを表しています。自立度は、確立された測定スケールである「基本的日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)※1」と「手段的日常生活動作(IADL:Instrumental Activities of Daily Living)※2」の合計点から評価され、3点は完全に「自立」(全く他人のサポートがなく生活が可能)な状態、2点は「手段的日常生活動作」に援助が必要な状態、1点は「基本的&手段的日常生活動作」に援助が必要な状態と、点数が下がるに従い自立度が下がり、生活において他人の援助が必要な割合が増えていきます。0点は「死亡」を表します。
※1:基本的日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)
日常生活を送るうえで、必要な最も基本的な生活機能。具体的には、食事や排泄、着脱衣、移動、入浴など
※2:手段的日常生活動作(IADL:Instrumental Activities of Daily Living)
日常生活を送るうえで、必要な生活機能でADLよりも複雑なものを指す。具体的には、買い物、洗濯、掃除など家事全般、金銭管理や服薬管理、外出して乗り物に乗ることなど

男性は3パターン、女性は2パターンが描かれる

統計的分析の結果、男性では3つのパターンが見られます。約2割(19.0%)の男性は70歳になる前に健康を損ねて死亡するか、重度の介助が必要となってしまいます。その原因の多くは生活習慣病であることもわかっています。他方、約1割(10.9%)の人は80歳、90歳まで元気なまま自立度を維持できています。そして大多数の約7割(70.1%)は75歳頃から徐々に自立度が落ちていきます。
一方、女性については、2つのパターンが見られます。早期に自立度を下げてしまうのは約1割(12.1%)で、約9割(87.9%)の女性は男性の7割の方と同様に70代半ばから緩やかに自立度が落ちていきます。これが、年齢と健康状態との関係を表した高齢者の実態です。
男性は心臓病や脳卒中などの生活習慣病によって介助が必要となったり、死亡する人が多いですが、女性はもっぱら骨や筋力の衰えによる運動機能の低下により、自立度が徐々に落ちていく傾向があります。なお、男性に見られる11%の自立度維持パターンが女性には解析結果として表出していませんが、これは「移動」能力の低下が男性に比べて大きいことが影響していることがわかっています。女性は男性に比べて総じて骨や筋力が弱いことが原因です。
理想は男性の約1割に見られる高い自立度を維持した生き方パターンになるでしょうが、誰もがそのパターンを歩めるわけではありません。個人としては、①長寿時代の若死にを避けるために、若年期から生活習慣の改善に取組むことが重要であること、②身体的な老化が避けられない中で、大半の人が緩やかに老いを体感していくという事実を受け止める必要があること、③その老いの過程は日常生活の継続を極端に妨げるようなレベルではなく、そうした状況下で自分らしい暮らしの実現を考えていくことが非常に大切であること、を認識しながら、少なくとも早期の自立度低下を避け、自立期間を最大化する(低下するタイミングを後ろにずらす)健康長寿に向けた取組みを行っていくことが大事です。また、社会においても、高齢者がますます増えていく未来に向けて、こうした高齢者の実態を踏まえながら、人生100年時代、最期まで安心して快適に暮らしていける環境・社会を築いていくことが求められます。

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