認知症予防に役立つ「マインド食」ってどんな食事?

認知症予防に役立つ「マインド食」ってどんな食事?

脳の障がいにより、記憶力や思考力などが低下していく「認知症」は、本人だけでなく家族や周囲の人の日常生活も左右する病気です。完全に予防することはできませんが、近年「マインド食」という食事が認知症の予防に役立つと注目を集めています。

マインド食とは?

マインド食とは、2015年にアメリカのラッシュ大学医療センターが発表した、アルツハイマー型認知症を予防する食事法です。

マインド食は、地中海沿岸の国々で伝統的な「地中海式食事法」と、高血圧を予防するダイエット食「DASH食」を組み合わせたものであり、両者の特徴は下記の通りです。


・地中海式食事法:魚や野菜、フルーツをメインに、オリーブオイルやナッツ類、赤ワインを取り入れた食事。
・DASH食:脂肪分やコレステロールの摂取を減らし、ミネラルをたくさん摂る食事。


これらを組み合わせたマインド食では、脳の健康の観点から「積極的に摂るべき食品」が10項目、「なるべく控えるべき食品」が5項目に分けられているのが特徴です。

積極的に摂るべき食品・10項目

・緑黄色野菜(週6日以上)
・その他の野菜(1日1回以上)
・ナッツ類(週5回以上)
・ベリー類(週2回以上)
・豆類(週3回以上)
・全粒穀物(1日3回以上)
・魚(なるべく多く)
・鶏肉(週2回以上)
・オリーブオイル(優先的に使う)
・ワイン(1日グラス1杯まで)

なるべく摂取を控えるべき食品・5項目

・赤身の肉(週4回以下)
・バター(なるべく少なく)
・チーズ(週1回以下)
・お菓子(週5回以下)
・ファストフード(週1回以下)

ベリー類のポリフェノールに注目

マインド食の推奨食品として注目したいのが、ベリー類です。いちごやブルーベリーなどのベリー類にも抗酸化物質である「ポリフェノール」が豊富に含まれており、海外の70歳以上の女性を対象にした研究によれば、「ベリー類の摂取量が多い人は認知機能の低下が最大2.5年遅い」という報告も得られています。

マインド食が認知症予防に効果的とされる理由

マインド食は、赤身の肉やバター、ファーストフードに多く含まれる「飽和脂肪酸」の摂取を控え、「不飽和脂肪酸」「抗酸化物質」を多く含むオリーブオイルやナッツ類をたくさん摂取するのが食事方法です。

「飽和脂肪酸」をたくさん摂ると血中の悪玉コレステロールが増えやすくなります。悪玉コレステロールの増加は動脈硬化の原因です。もし、脳の血管で動脈硬化が起こってしまえば、脳梗塞や脳出血のリスクが高まり、「脳血管性認知症」のリスクも高まってしまいます。

マインド食は食事中の「飽和脂肪酸」の摂取を減らすだけでなく、オリーブオイルなどから「抗酸化物質」を取り入れることで悪玉コレステロールの酸化を抑制し、血管の老化を予防します。

また、食事から脳の血管や細胞膜の材料になる「不飽和脂肪酸」を多く摂取することで、脳の機能維持が見込めると考えられています。

マインド食に関する研究の結果について

前述のラッシュ大学医療センターが58〜98歳の932名を対象に、食事とアルツハイマー型認知症の予防効果の関連性について4年半かけて調査・研究したところ、「マインド食を厳密に守って食事を摂ったグループ(15項目中9項目を達成)は、5項目以下の達成率のグループと比べ、アルツハイマー型認知症の発症リスクが53%減少した」という結果が得られたそうです。

なお、同研究では「地中海式食事法やDASH食は、厳密に実施したグループでしかアルツハイマー型認知症の発症リスクは下がりませんでしたが、マインド食では適度に実施したグループからも発症リスクの35%の低下が認められた」という結果も出ており、マインド食であれば部分的な実施でも認知症の発症予防効果が期待できるという結果が出ています。

日本の食事は塩分が多い。「減塩」も重要!

ご紹介したマインド食の項目はアメリカ版のもので、日本人にどれだけ効果があるのかについては研究段階にあります。ただ、日本の食生活は塩分の摂取量が多くなりがちです。塩分の過剰摂取は高血圧のリスクを上げる要因であり、最終的に脳血管を傷つけ動脈硬化を引き起こし、認知症リスクを高めます。
塩分の摂りすぎにも十分に注意しましょう。

おわりに:日々の食材を「マインド食」に置き換えてみよう

認知症予防に役立つ食事法には様々な方法がありますが、「マインド食」は適度な導入でも効果が期待できるとされている、比較的取り入れやすい食事法です。
デザートをベリー系のフルーツに置き換えるなどして、試してみましょう。


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