丹野智文 認知症と生きる①

丹野智文 認知症と生きる①

おはよう21 2015年12月号
日本認知症ワーキンググループ /おれんじドア実行委員会代表 丹野智文
※本記事は、2015年~2017年に月刊誌『おはよう21』に掲載された丹野智文さんの連載「41歳、認知症と歩む」を、一部改変のうえ、再掲するものです。記載内容等は連載当時のものとなっております。

認知症=終わり、ではありません

こんにちは、丹野智文と言います。私は2013年の春、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断されました。
2つの大きな病院で検査入院を重ね、「アルツハイマーで間違いありません」と言われたとき、私は“終わった”、と思いました。横で妻は泣いていましたし、子どももまだ小さいのにこれからどうしようと絶望的な気持ちでした。
しかし私は今も、発症前と同じ会社で仕事を続けています。また、認知症と歩む当事者として、各地で専門職や一般の人たちに講演を行うなど、アクティブに生活しています。2014年の国際会議 (認知症サミット日本後継イベント)のスピーチや、2015年の始めの安倍首相*1との意見交換では、認知症の人の働きたい思いを直接多くの人に伝える機会をいただきました。最近は、同じ認知症の仲間を支えるための活動も始めています。
それらの活動を通し、どんどん自分が前向きになっている気がしますし、「認知症=終わりではない」と、現在では思っています。
なぜ私が前向きに、安心感をもって毎日を過ごすことができているのか。その理由を、私に起きたこれまでの出来事、そして今の私が考えていることから、お伝えできればと思います。

幼い頃

1974年2月。私は宮城県仙台市から少し南にある、岩沼市で生まれました。年が近い3人きょうだいの末っ子で、甘えん坊だったと思います。
外で遊ぶのが好きで、きょうだいや友だちと鬼ごっこなどをして暗くなるまで遊んでいたのを覚えています。小さい頃は、勉強が得意な方ではなかったですし、スポーツも苦手でした。
小学生のとき、近くに住む親せきに誘われて、仙台市内の中高大一貫の私立校を受験し進学しました。
学校までは、電車で30分くらいかけて通学しました。中高は男子校ですから、女性が誰一人としていない環境です。
部活は弓道部に入りました。一貫校なので、入ってしまえばもう受験もないと、勉強せず部活だけをやっていました。学校を休んでも、夕方からの部活には行ったなんてことも......。本当に部活一色です。
部活動は高校の先輩とも一緒でした。中学1年生ぐらいから、高校生の先輩たちにビリヤード場やボーリング場に連れていってもらったり、喫茶店に行ったりするのがとても楽しくて、いつも先輩について歩いていましたね。弓道の段位も、高校で二段まで取りました。
このときの部活の仲間たちとは今も交流があります。病気になってから、彼らとの嬉しい出来事もありました。そのエピソードは今後の連載でご紹介します。
弓道着で友達と一緒に

弓道着で友達と一緒に

アルバイトと就職

そのままエスカレーター式で大学の経済学部に入り、4年間はずっと予備校でアルバイトをしていました。授業はもちろん、予備校の寮の管理人もしたり、そこでワープロを使った事務仕事なども覚えました。人と話をしたり、接することが得意になったのもそこからでしょうか。
大学生活も終わりに近づき、就職を考え始めた頃、最初は化粧品業界を考えました。化粧品の販売に興味があったことと、これまで男子校育ちで、女性が多い環境に憧れたからです。ただ、それほどまじめに活動はしていなかったと思います。
あるとき、企業の合同就職セミナーに行った際に、たまたま空いているからと話を聞いたのが、トヨタオート仙台*2のブースでした。
そしてこれも偶然ですが、ブースの担当者が同じ大学のOBで「うちに入れよ」と言ってくれたので、就職試験を受けました。その後、内定が出て、すぐに入社を決めました。
車は嫌いではなかったのですが、それを仕事にするとは思っていなかったので、自分でも意外でした。就職が決まって親に話すと、「あなたに人にものをすすめたりする営業は無理だから、事務職の方が向いているのでは?」という反応でしたね。
自動車販売の仕事は大変でしたが、やりがいもありました。職場での私の奮闘は、次回にお伝えしようと思います。
*1 現・衆議院議員 安倍晋三氏
*2 現・ネッツトヨタ仙台。現在も丹野さんが働く自動車販売会社
生21-4004,商品開発G
丹野智文さん

丹野智文さん

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