若い時から笑うことが、認知症予防に繋がる!? 「笑う」行動と健康との関係性【前編】

若い時から笑うことが、認知症予防に繋がる!? 「笑う」行動と健康との関係性【前編】

「笑う門には福来たる」と言いますが、実は笑いと認知症には関連性が高いのだとか。そんな研究をされているのが、福島県立医科大学疫学講座の大平哲也教授です。どんな笑いが効果的なのか、なぜ認知症と笑いに関係があるのか、詳しくお伺いしました。

「笑い」を研究していたら、認知症にたどり着いた

一見、医学とは遠い印象の「笑い」。なぜ、認知症との関連性に着目したのでしょうか。

「実は最初のきっかけは逆で、『笑い』の研究から始めたんです。笑いと年齢の関係を見ていたら、年齢と共に笑いは減っていくことが分かりました。そこで、笑いは老化指標のひとつなのではないか、と考えました。そして、老化を決定づけている要因のひとつが認知機能であることから、認知症に着目しました。」
▲福島県立医科大学疫学講座の大平哲也教授

▲福島県立医科大学疫学講座の大平哲也教授

「実は、笑いは高度な脳機能が必要なんです。一瞬にして理解し、一瞬にして笑う必要があります。笑いと認知機能の関連性を調べると、笑わない人ほど認知機能が低くなりやすい傾向があり、認知機能が正常な人を調べると、笑わない人から将来認知症になっていく傾向があることが分かりました。」

ネガティブをなくすのではなく、ポジティブを増やしていく

「笑い」を医学的に研究するということ自体を意外に思う方も多いかもしれません。研究は日本が先進的なのでしょうか。

「海外は『ユーモア』の研究が多く、『笑い』そのものを研究している人はそう多くないですね。『笑い』の研究自体は何十年も前からされていますが、ここ十数年で飛躍的に増えてきました。」

「元々、ネガティブなストレスをなんとか減らそう、コントロールしようという取り組みが多かったのですが、そもそもストレスはそんなに減らないんです。仕事をしている限り、ストレス自体を減らすことは難しいですよね。」

「そこで、ネガティブなストレスを減らすのはやめて、やりがいや楽しみ、報酬といったポジティブな要素を増やすことでストレスを緩和させよう、という動きが増えてきました。そこで、『笑い』が注目されるようになってきたんです。」

「笑い」は、感情ではなく行動

ネガティブに着目するのではなく、ポジティブに着目する「笑い」の研究。それでは、「笑い」と「ユーモア」とは、何が違うのでしょうか。

「面白いと思っただけでは、『笑い』ではありません。『ハハハ!』と声が出たり、笑顔になったりすることで初めて『笑い』になります。『笑い』は感情ではなく行動なんです。」

「一方で、『ユーモア』は笑いを引き起こさせるものです。海外ではどんなふうにユーモアを起こしたら良いかという研究が多いですが、我々は健康との関係を見たいので、『笑い』という行動に注目しました。」
▲笑いは感情ではなく行動と語る大平教授

▲笑いは感情ではなく行動と語る大平教授

「具体的な研究結果として分かっているのは、『笑っている人と笑っていない人を比べると、笑っていない人の方が、認知機能が低下しやすい傾向にある』ということと、『笑わない人から将来認知症を発症する傾向にある』ということです。」

「認知症の危険因子である動脈硬化(糖尿病や高血圧)といった因子を調べてみると、笑うことで糖のコントロールが良くなったり、血圧が下がったりすることが分かっています。笑うことが認知症予防に効果的であると同時に、笑わないことは認知症の最初の予測因子になりうると考えています。」

運動、脳内リセット、人付き合い。笑いの全ての要素が予防に働く

それでは、どのような「笑い」の種類が、認知症予防に効果的なのでしょうか?

「実は、どんなふうに笑ったら良いかという研究はほとんどないんです。しかし、笑うという行為自体には3つの要素があります。」

「腹式呼吸による運動と、笑っている一瞬は嫌なことを忘れられる脳内リセット効果、そして人付き合いが良くなること。この要素のそれぞれが認知症と関連があり、予防的に働くと考えています。」

それでは、具体的にどんなことをすると「笑い」に繋がるのでしょうか?「笑い」を減らさない為に家族でやっておくべきことや、日本人特有の「笑い」の傾向などを後編でお届けします。
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大平哲也さん

大平哲也さん

福島県いわき市生まれ。平成2年に福島県立医科大学医学部医学学科卒業。現在、福島県立医科大学医学部疫学講座の主任教授、同 放射線医学県民健康管理センター疫学部門の部門長を務める。研究分野は循環器疾患の疫学、予防医学、健康科学、心身医学。研究経歴には、「笑い等のポジティブな心理介入が生活習慣病発症・重症化予防に及ぼす影響についての疫学研究」などがある。

文=齋藤優里花(under→stand Inc.)/ 写真=山本春花

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