認知症には、いつ誰がなってもおかしくない…そう聞いても、どこか他人事のように感じている自分がいる。そんな方は多いのではないでしょうか。
「私たちの家族にとってはまだ先のこと」だと思っていても、ある日突然、その兆候を感じる日がやってくるかもしれません。
「私たちの家族にとってはまだ先のこと」だと思っていても、ある日突然、その兆候を感じる日がやってくるかもしれません。
今回は、祖父母の認知症介護を経験した3人の女性にお話を伺いました。
3つの家族の認知症介護体験を通して、「家族が認知症と診断されたとき、その家族としてどのように認知症と向き合うのか」を多くの人に知ってもらえたらと思います。
3つの家族の認知症介護体験を通して、「家族が認知症と診断されたとき、その家族としてどのように認知症と向き合うのか」を多くの人に知ってもらえたらと思います。
家族の認知症に気づいたきっかけ、家族の反応は?
「近所の方から、『おばあちゃんが家に帰れなくて困っている』と電話をいただいたんです。すぐそこを曲がったら自宅、という状況での出来事だったので、これは良くないなと思いました。」
そう話してくださったのは、京都府にお住まいのAさんです。
そう話してくださったのは、京都府にお住まいのAさんです。
「認知症だったのは、私の父方の祖母。介護していたのは、祖母の義理の娘にあたる、私の母です。
最初に異変を感じたのは、祖母の夫である祖父が亡くなったタイミングでした。祖母がすごく寂しそうにしていて…。祖父と祖母は、『祖父が全部決めて、祖母が1歩後ろからそれについていく』という、本当に昔ながらの形でやってきた夫婦だったんです。祖父が亡くなって何も決められない祖母が残り、『これから毎日どうしよう、どうしたらいいのかしら?』という感じだったんですね。最初は、ただ寂しいという感じなのかな?と思っていたのですが、そのうち物忘れと言いますか、『そんなことあったかしら?』と言ったりすることが多くなってきました。」
最初に異変を感じたのは、祖母の夫である祖父が亡くなったタイミングでした。祖母がすごく寂しそうにしていて…。祖父と祖母は、『祖父が全部決めて、祖母が1歩後ろからそれについていく』という、本当に昔ながらの形でやってきた夫婦だったんです。祖父が亡くなって何も決められない祖母が残り、『これから毎日どうしよう、どうしたらいいのかしら?』という感じだったんですね。最初は、ただ寂しいという感じなのかな?と思っていたのですが、そのうち物忘れと言いますか、『そんなことあったかしら?』と言ったりすることが多くなってきました。」
おばあさまの異変を感じながらも、それでもはじめは「1人暮らしになって寂しいのかな」程度に受けとめていたといいます。
「さきほどお話したご近所の方からの電話で、『これは病院に行った方がいいかもしれない』と思うようになりました。それからは、もう日を追うごとにいろいろなことを思い出せなくなっていきまして。
母はヘルパーの資格を持っていて、実際に介護を仕事にしていたので、祖母の異変には早い段階で気づいていました。一方で父は、『自分の母親が認知症になった』という事実をなかなか受け入れられなかったようです。」
母はヘルパーの資格を持っていて、実際に介護を仕事にしていたので、祖母の異変には早い段階で気づいていました。一方で父は、『自分の母親が認知症になった』という事実をなかなか受け入れられなかったようです。」
「自分や夫の両親の老後を気にする年齢になってきたな、と感じることが増えて。他の方の話を聞いてみたいと思いました。」座談会に参加した理由をそう説明してくださった、埼玉県にお住まいのBさん。
「認知症だったのは母方の祖母で、母と祖父が介護をしていました。私自身は社会人になって家を出ていて身近で見てはいないのですが、祖母の話はよく母から聞いていたんです。」
Bさんのおばあさまの場合は、特にこれという明確なきっかけがあったわけではなく、日常生活での様子に少しずつ異変が出てきたそうです。
「最初は、いつもの会話がちょっと長くなると、祖母の目の焦点が合わなくなってくることに母が気づいたそうなんです。頭の中に入っていないといいますか…。『聞いてる?』という問いかけには、『聞いてるよ』と返ってくるものの、母はその様子を見ていて、『何かおかしいなぁ、ちゃんと聞いてるのかな?』と感じたそうです。また、ぼーっとしている時間も増えたと言っていました。」
おばあさまの異変は日常生活だけでなく、仕事でも見られるようになってきたといいます。
「私の実家は自営業をしており、祖母と母は一緒に同じ仕事をしていたのですが、お金のやりとりを間違えてしまったりと、仕事中の間違いが増えていったそうです。あと、仕事の休憩中に居眠りのような、『自分でも気づかないうちに寝ている』ということがたびたびあったり。」
はじめは年齢的なものが原因だと考えていた、というBさんとお母さまですが、そのような行動が頻発するうちに「何だか様子がおかしい、ちょっと違う」と確信するようになっていきます。
一方で、その事実をなかなか受け入れられなかったのは、おばあさまの夫であるおじいさまでした。
一方で、その事実をなかなか受け入れられなかったのは、おばあさまの夫であるおじいさまでした。
Bさんと同じ埼玉県にお住まいのCさんは、母方の祖父であるおじいさまの認知症についてお話を聞かせてくださいました。
「祖父の場合は、手足の震えが出てきてご飯をこぼして…というところがスタートでした。母が看護師の資格を持っていたので、早めに気づけたし、家族も母からきちんと説明してもらえて納得しやすい状況だったと思います。」
おじいさまがもともと糖尿病を患っていたため、その合併症の認知症なのでは…と家族みんなが思っていたそう。
「また(糖尿病の)合併症が出たね、みたいな。幻覚や幻聴といった症状が出ても、あんまり深刻に捉えていないところがありました。祖父はもともと冗談や軽口が多いタイプだったので、例えば祖父が『猫が通った』と言っているけれど、家族は誰も見ていない…という時も、『おじいちゃんがまた冗談を言っている』という程度に捉えていたんです。」
初期の症状や気づくきっかけ、家族の反応もそれぞれ違う
3人のお話からもわかるように、認知症の初期の症状は人それぞれ違うもの。それにともなって、ご家族の気づくきっかけも三者三様でした。
また、AさんとBさんのお話にあった「肉親の認知症を受け入れられない」というエピソードには、共感を寄せる方も多いのではないでしょうか。筆者自身も、肉親にちょっとした症状が現れたとして、すぐに「認知症かも」と考えることはできないのではないか…「きっと年齢のせい」「時期的なものかも」と考えてしまうのではないか、と感じます。
ですが、この「受け入れられない・認められない」ことが受診の遅れにつながり、気づいたときには症状が進行してしまっている…という事態になってしまうかもしれません。続く#2では、ご本人や家族が認知症を受け入れるまでのプロセスや、実際の介護についてのエピソードをご紹介します。
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