くも膜下出血発症後に見られる合併症について

くも膜下出血発症後に見られる合併症について

くも膜下出血は脳動脈瘤の破裂等が原因で起こり、発症後に脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)や水頭症等の合併症を発症する可能性があります。この記事では、くも膜下出血発症後に見られる合併症について解説します。

くも膜下出血発症後の脳血管攣縮について

脳血管攣縮とは、脳の血管が収縮することで血液の流れが滞った状態です。くも膜下出血発症の3日から3週間程度後に起こると言われており、意識状態の悪化・言語障がいの悪化・手足の麻痺等の症状が現れ、一般的には、くも膜下出血が重症である程、脳血管攣縮の発生率も高くなると言われています。

脳血管攣縮が疑われる場合、脳血管造影検査(造影剤が脳血管を流れる様子をX線撮影で調べる検査)・経頭蓋的ドプラー検査(TCD:脳動脈内の血流速度を調べる検査)等の検査が行われ、トリプルH療法が行われる可能性があります。トリプルH療法とは、人為的高血圧(hypertension:脳血流を維持するため、意図的に高血圧状態にする治療)・循環血液量増加(hypervolemia:脳血量を増やすため、輸液量を増やす治療)・血液希釈(hemodilution:血液の流れを良くするため、血液を希釈し血漿を増やす治療)を併せて行う治療方法です。

くも膜下出血発症後の水頭症について

水頭症とは、脳脊髄液(脳・脊髄・硬膜の間に存在する無力透明の液体)の流れが滞ることで脳脊髄液が増加し、脳室(脳の内部にある空間)が大きくなった状態です。くも膜下出血が原因の水頭症では、くも膜と脳表に癒着が起こることで生じます。多くの場合、くも膜下出血の発症から数週間から数か月後に発症し、主な症状として歩行障がい・認知障がい・尿失禁等が現れます。歩行障がいは歩幅が狭い・転倒しやすい等の特徴があり、早い段階から症状が現れ始めると言われています。

水頭症が疑われる場合、CT検査・MRI検査等で脳室の大きさを確認し、髄液タップテスト(髄液を排出することで症状の改善が見られるかを確認する検査)を行い、歩行障がい・認知障がい・尿失禁等の症状の有無も確認します。治療では、脳室腹腔短絡術(VPシャント術:髄液の新しい循環経路を作る治療)が行われ、緊急時には脳室ドレナージで脳脊髄液を排出する治療を行う可能性があります。


くも膜下出血後には、脳血管攣縮や水頭症以外にも「神経学的な合併症(意識障がい・言語障がい・感覚障がい・運動麻痺・脳卒中(脳梗塞・くも膜下出血・脳出血等))・痙攣等)」や「全身的な合併症(髄膜炎・心不全・腎不全・呼吸障がい・電解質異常・脱水・発熱等)」が現れる可能性があります。くも膜下出血の手術後には、これらの合併症にも注意が必要であり、合併症の発症後は適切な対応が必要になると言われています。
提供元:株式会社SPLENDID、株式会社ライフケアパートナーズ

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