認知症の方とのコミュニケーションに役立つ「バリデーション」と「ユマニチュード」について

認知症の方とのコミュニケーションに役立つ「バリデーション」と「ユマニチュード」について

認知症の方とコミュニケーションを取る際は、話すペースを合わせる・ひとつずつ簡潔に伝える・「できること」「分かること」を見つけて褒める等が大切ですが、実際はもう少し細やかな手法が必要になる場合があります。この記事では、認知症の方とコミュニケーションを取る際に役立つ「バリデーション」と「ユマニチュード」について解説します。

バリデーションについて

バリデーションとは、認知症の方が感じている世界を否定せず、「傾聴する・共感する・誘導しない・強制しない・嘘をつかない・ごまかさない」等の基本的態度をもとに行う手法です。例えば、徘徊・妄想等の言動には理由があると言われていますが、その理由をバリデーションのテクニックを用いて汲み取ることで、認知症の方に安心感を与え、落ち着かせることができる可能性があります。バリデーションには主に以下のテクニックがあります。

・センタリング:介護する方が精神を集中する
・リフレージング:重要な言葉を反復する
・オープンクエスチョン:「はい・いいえ」ではなく、自由に答えられる質問をする
・レミニシング:懐かしい思い出話をする
・ミラーリング:真正面に向き合い、動作・姿勢・声の大きさ・話し方等の真似をする
・タッチング:話の内容や目的に応じ、触れ方を変えながらスキンシップを取り感情に寄り添う
・アイコンタクト:真正面の位置で相手の目を見る
・はっきりした、低いやさしい声で話す
・音楽を用いる 等

ユマニチュードについて

ユマニチュードとは「人間らしさを取り戻す」という意味のフランス語の造語であり、介護する方が全てやってあげるのではなく「ご本人が持っている能力を最大限引き出す」ことを大切に考えている手法です。健康状態に応じた身体機能の回復・維持を目指し、以下の基本動作を組み合わせ、コミュニケーションを取ります。

・見る:介助の際に「視線の高さを合わせ、近い距離で見る」ことで信頼関係を築きやすくなる
・話す:「動かないでください」等の命令口調に聴こえる言葉を避け、「今から身体を起こしますよ」等、やろうとしていることを実況形式で伝える。穏やかでやさしい声のトーン・大きすぎない声量・前向きな言葉を心がけることも大切
・触れる:強く掴む・手や顔に突然触れる等すると、介護を受けている方から「自由を奪われている」と感じられやすいため、肩・腕・背中等の「感度の低い部位」からそっと触るようにする
・立つ:寝たきりの予防には「立つ訓練」も大切になるため、トイレまで歩く・立ったまま着替える等の立位の時間を日常的に組み込む


認知症の方とのコミュニケーションが円滑になることは、認知症の方の不安の軽減だけでなく、介護する方の負担軽減にも役立ちます。認知症カフェ等のコミュニティで悩みを相談したり、協力を求めたりすることも大切です。
提供元:株式会社SPLENDID、株式会社ライフケアパートナーズ

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