急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫について

急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫について

硬膜とは頭蓋骨の内側にある膜であり、この硬膜の内側で起こった出血が血腫となり発症する疾患を硬膜下血腫と言います。硬膜下血腫は、高齢者に起こりやすいと言われていますが、あらゆる年齢層に起こる可能性があります。この記事では、急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫について解説します。

急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫

硬膜下血腫には、急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫があります。

●急性硬膜下血腫
急性硬膜下血腫は、転倒・転落・交通事故等による頭部外傷等により硬膜の内側で出血が起こり、血液が脳と硬膜の間に溜まり、短時間でゼリー状に固まった血腫が脳を圧迫する疾患です。大脳の表面に起こりやすいと言われていますが、左右の大脳半球の間や小脳の表面にできる可能性もあります。なお、脳自体の損傷がひどくなくても、出血により血腫ができれば発症する可能性があります。重症の場合は意識障がい・昏睡等の深刻な状態に陥る可能性があり、初期に軽症であっても急激に悪化する可能性もあります。

●慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫とは、頭部に外傷を受けてから1か月から2か月程度経過した後、脳と硬膜の間に血が溜まり血腫になる疾患です。受傷してから3週間以降に、頭痛・片麻痺(体の左右どちらかに麻痺の症状が現れる状態。歩行障がい等を引き起こす可能性がある)・精神症状・認知障がい等が現れます。前頭部・側頭部・頭頂部に起こりやすく、片側に起こることが多いと言われていますが、両側に起こる可能性もあります。原因となる血腫は、脳と硬膜を繋ぐ血管が損傷することで発生した血性貯留液(髄液等と混ざり溜まった血液)が、少しずつ被膜を形成しながら成長することで血腫に成長すると考えられています。

急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫の治療について

急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫の治療には、主に以下の違いがあります。

●急性硬膜下血腫の治療
急性硬膜下血腫は急激に血腫が形成され脳を圧迫するようになるため、発症後は早期に手術等を行い血腫を取り除く必要があります。手術では、血腫のある部位の頭蓋骨・硬膜を大きく切開し血腫を取り除き、出血源がある場合は止血処置等を行います。また、脳が腫れている場合は、血腫を取り除いた後も頭蓋骨の一部を外した状態にし、脳圧を下げる処置が行われる可能性があります。

●慢性硬膜下血腫の治療
慢性硬膜下血腫は急性硬膜下血腫に比べると緊急性があまり高くないと言われており、頭蓋骨・硬膜の一部に小さな穴を開けチューブを挿入し、溜まった血液を吸引する手術等が行われます。


酔った際に頭を打った等、頭部外傷を受けたことをはっきり覚えてない方も硬膜下血腫を発症する可能性があります。軽く頭を打った際でも念のため医療機関を受診するようにし、頭を打った等の自覚がない場合でも、疑わしい症状がある際は早急に医療機関を受診ししてください。
提供元:株式会社SPLENDID、株式会社ライフケアパートナーズ

生23-3614,商品開発G

関連記事

  • 血管迷走神経反射の原因と対処法

    血管迷走神経反射の原因と対処法

    血管迷走神経反射とは、何らかの刺激で迷走神経反射が起こり、血圧・心拍数が急激に低下する状態です。めまい等の影響で転倒した際に怪我をする恐れがあり、神経機能が低下している高齢者の方に起こりやすいと言われています。この記事では、血管迷走神経反射の原因と対処法について解説します。

  • 肝臓がアルコールを代謝する仕組みと摂り過ぎによる影響

    肝臓がアルコールを代謝する仕組みと摂り過...

    肝臓には、吸収した栄養を利用しやすい物質に変える・栄養を貯蔵する・必要に応じエネルギーを作り出す・不要な物質や有がい物質を解毒し排泄する等の働きがあります。また、肝臓は、アルコールの代謝【体内で行われる化学反応】にも関わっています。この記事では、肝臓がアルコールを代謝する仕組みと摂り過ぎによる影響について解説します。

  • COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療内容と日常生活の注意点

    COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療内容と...

    COPD(慢性閉塞性肺疾患)を発症すると、咳・痰・息切れ等の症状が現れ、進行すると少し動いただけでも息切れするようになり、呼吸不全・心不全等を引き起こし命に危険が及ぶ可能性があります。この記事では、COPDの治療内容と日常生活の注意点について解説します。