がんによる腹水の特徴と治療方法

がんによる腹水の特徴と治療方法

腹水とは、腹腔内に体液が溜まっている状態であり、がんが原因で起こる可能性があります。この記事では、がんによる腹水の特徴と治療方法について解説します。

がんによる腹水の特徴

がんによる腹水は、がんが腹膜に広がった際の刺激を緩和するため、体液が過剰に作られることが原因で生じると考えられています。何らかの原因で腹膜に炎症が起きると、炎症に関係する物質・細胞【フィブリン・グロブリン・白血球等】を運搬するため、血管の隙間が拡張されます。この状態を「血管透過性の亢進」といい、進行にともない血管から体液が漏れ始め、漏れ出した体液が腹腔内に蓄積されるようになります。

血管透過性の亢進を引き起こす原因として、がん性腹膜炎【がんが腹膜に広がることにより起こる炎症】・虫垂炎による腹膜炎等が挙げられます。また、がんが肝臓・門脈【肝臓に血液を供給する血管】まで広がると、肝臓内の血圧が上昇し、血管・リンパ管からしみ出した体液が腹水として溜まる場合があります。

少量の腹水であれば目立った症状・変化が現れない場合もありますが、腹水の増加にともない腹部が徐々に膨らみ、臍(へそ)が平らになる・臍が押し出される等の変化が現れるようになります。このような変化は、腹水による圧迫が原因で起こり、以下の症状・変化が現れる可能性もあります。

・腹部の腫脹、ウエストサイズの増加
・腹部の不快感、膨満感
・腹圧増加
・下腹部の痛み
・食欲低下
・消化不良
・吐き気
・息切れ、呼吸困難
・体重増加
・疲労
・便秘
・足首の腫脹 等

腹水の治療方法

水分制限・利尿剤・ステロイド・抗がん剤等の治療で状態が改善しない場合は、腹腔穿刺(ふくくうせんし)【腹腔内に専用の針を刺して腹水を排液する治療】が検討される可能性があります。排液の際に電解質やたんぱく質(アルブミン等)が急激に失われると、栄養状態が低下して腹水がさらに溜まりやすくなるため、1回の排液量を管理する必要があります。

なお、腹水による腹部膨満で皮膚が過剰に引き伸ばされた状態になると、皮膚の細胞と細胞の間が広がり、傷がつく恐れがあります。腹部の皮膚に刺激を与えないようにした上で清潔を保つことを心がけ、以下の工夫・治療が必要になる場合もあります。

・体位・姿勢の工夫:腹部膨満感・息苦しさを軽減するため、楽に過ごせる体位・姿勢を取る。
・食事療法:低たんぱく血症の場合は高たんぱく食にする・腎臓に異常が起こっている場合は水分制限や塩分制限の食事にする等を行う。
・薬物療法:利尿薬により尿の排出を促し、血管内圧を低下させる。


腹水の治療では、CART療法【腹水に含まれる細菌・がん細胞等の有毒物質を濾過し、体に必要なアルブミン等を回収し体内に戻す治療】が検討される可能性があります。CART療法を受ける際は、メリット・デメリットについて医療機関から十分説明を受けるようにしてください。
提供元:株式会社SPLENDID、株式会社ライフケアパートナーズ

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